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ジュニアライター発信

HICARE 被曝事故備え人材育成

 放射線被曝(ひばく)者医療国際協力推進協議会(HICARE、広島市中区)は、広島の医療(いりょう)・研究機関などが、被爆者の治療(ちりょう)や放射線障害について研究してきた経験や知識を、国内外で生かしているグループです。広島市と広島県が出資し、広島大や放射線影響研究所(放影研)などが協力して1991年に発足しました。

 きっかけは、86年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故でした。被爆者治療のノウハウを持った広島・長崎が注目されたのです。当時のソ連から、専門家が広島大や放影研に来て研修や情報の提供を受けました。そこで、県や市、関係団体が窓口をつくって受け入れることにしたのです。

 HICAREは、医師の派遣(はけん)や受け入れ研修をしています。設立してから2013年3月末までに、韓国やカザフスタン、福島などに189人を派遣。388人(他の団体からの依頼(いらい)による一部研修を含(ふく)めると計1305人)を受け入れました。10年には国際原子力機関(IAEA)と「覚書」を交わし、IAEAの研修で講師を務めたり、共同研究をしたりして、国際協力の幅(はば)を広げています。

 また、92年に、被爆者医療のまとめとして「原爆放射線の人体影響1992」を出版。12年には最新の研究成果を加えた、改訂(かいてい)第2版を出しました。現在は、医療現場での被曝や、福島第1原発事故のような災害が起きた時に対応できる医師や看護師など人材育成に力を入れています。

 事務局総括(そうかつ)書記の岩崎和浩さん(53)は「研究には多くの人々の死があり、その犠牲(ぎせい)の上に成り立っていることを忘れてはいけない」と話します。

 深い傷を負っても、それを未来へ生かしていく大切さを私たちは学ぶべきです。(高1・谷口信乃)

(2014年4月7日朝刊掲載)

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