×

ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 映画「アトミックマム」監督に質問 過ち認めた母 許せた

 米海軍で1950年代、放射線による熱傷研究に携わった女性の苦悩や心情の変化などを素材にしたドキュメンタリー映画「アトミックマム」(2010年)を娘のM・T・シルビアさん(59)が監督しました。広島市であった上映会にシルビアさんが米国から駆け付け、会場からの問いに答える形で自作について語りました。私たちジュニアライターも質問しました。主なやりとりは次の通りです。

  ―制作のいきさつや苦労を聞かせてください。
 家族の記録として始めました。母につらい思いをさせ、自分のやっていることは正しいのか、と思う時もありました。周囲の協力や励ましで7年かけて完成。(作品に出てくれた)広島の被爆者、岡田恵美子さん(78)=東区=とも出会えました。昨年、母は亡くなりましたが、一緒にいいものを作れたと言いたいです。

  ―映画制作の過程で母の気持ちが理解できたと、作品の中で言われていますね。
 対話を重ねるうち、母は1953年のネバダ核実験について「参加は誤りだった。今なら絶対にしない」と過ちをはっきり認めたのです。核実験当時、科学者の夢にあふれた23歳の母の気持ちや、その後の心境の変化、退役後の沈黙の意味も分かり、許せるようになりました。深い話し合いを通じて理解し合えたのです。私と母との間に限らず、対話は、世界の紛争を解決する上でも大事だと思います。

  ―若い世代に何を期待しますか。
 核兵器のある世界がどれほど危険か、みんなよく知っているでしょう。私たちはグローバルファミリー(地球家族)。国境を越えて協力し合うことが大事です。若い人もその一員。核の怖さについて勉強するだけでなく、各自が世界にいろんな発信をしていってほしいです。(高2山下未来、高1風呂橋公平)

(2015年8月31日朝刊掲載)

年別アーカイブ