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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 疎開児童の強さに感動 「撫子」を鑑賞 広島

 戦時中に広島市中心部から広島県北に学童疎開(そかい)した小学6年と3年のきょうだいに宛てた家族の手紙を、オペラ仕立てにした物語「撫子(なでしこ)」を見ました。学童疎開について学校ではあまり習っていませんでした。オペラでは、子どもに対する家族の思いがよく表現されていて新鮮(しんせん)でした。

 手紙は父や母、兄が書いたものです。教養のある父は、疎開先の自然を見て学ぶよう助言。優しい母は、貴重な食べ物や生活用品を送り、いたわりや励(はげ)ましの言葉をつづっていました。しっかり者の兄は、6年の弟、3年の妹に対し、疎開先の規律に従い勉強するよう教えていました。

 ピアノに合わせて朗読する手紙の最後に日付が書いてあります。8月6日に近づくにつれ、家族の別れが迫(せま)っていると思い、悲しくなりました。原爆により家族を失った2人は、手元に残った手紙の束が、大きな心の支えとなったのです。

 劇は、妹の咲子(さきこ)さんの「学童疎開の思い出というよりも、今までの生活全てを失って兄と2人で歩き始めた第二の出発点として、生涯(しょうがい)忘れることができません」との言葉で締(し)めくくられました。家族をいきなり失ったにもかかわらず、手紙により家族の深い絆(きずな)を思い起こし、2人で生きていく強さを持っていて感動しました。

 私には家族がいて、不自由のない生活を送れています。この現状に感謝しなければいけないと思いました。(高2新本悠花)

(2015年7月20日朝刊掲載)

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