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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「『少年T』のヒロシマ」(田邊雅章著) 当たり前の日々崩壊

 当たり前の暮らしが一瞬(いっしゅん)にして崩(くず)れ去(さ)ってしまう。それが戦争であり、原爆なのだと感じました。

 1945年8月。広島の産業奨励(しょうれい)館のすぐ横にある自宅にいた筆者の母と弟は、疎開(そかい)先へ戻(もど)る予定だった6日の朝、原爆のため、帰らぬ人となりました。父も7日後に亡くなり、当たり前だと思っていた幸せな家族は崩壊(ほうかい)してしまいました。

 あれから70年が経過した今、被爆を体験した人の証言を聞くことができるのも、当たり前のことではなくなりつつあります。

 被爆の事実を伝える一つの方法として、筆者はコンピューターグラフィックス(CG)映像を使った爆心地の復元に取り組みました。科学の発達した現代ならではの方法で、多くの人の理解を助けるでしょう。ただ、当時の人々の息づかいや町の「空気」など、二度と戻らないものもあると僕は思います。

 だからこそ、戦争や原爆は絶対に許せません。当たり前にある人々の生活や人生。それらを失わないために僕たちは何をすべきか、考えたいです。(高1風呂橋公平)

(2015年12月7日朝刊掲載)

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