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ジュニアライター発信

Peace Seeds ヒロシマの10代がまく種(第13号) もっと「学ぼうヒロシマ」 

 ことしももうすぐ8月6日がやってきます。被爆70年を迎えたヒロシマのこと、世界の核兵器(かくへいき)の現状…。それらについて中高生の皆(みな)さんに考えてもらうための平和学習新聞「学ぼうヒロシマ」が出来上がりました。

 広島県内の全ての中学・高校、そして山口県東部10市町の国公立中学校に順次、配られています。新聞には、ジュニアライターが取材した被爆者の証言、原爆・平和に関するミニ解説、おすすめブックガイド、新聞を読んだ上で答えてもらって理解度をチェックする問題やクロスワードパズルが載(の)っています。

 この新聞をもっと身近に感じ、使い込んでほしいという思いで、ジュニアライターが活用案を話し合い、実践してみました。みんなで協力して取り組む作業もあれば、1人でできるものもあります。他にもいろんな利用の仕方がありそう。皆さんも考えてみませんか。

<ピース・シーズ>
 平和や命の大切さをいろんな視点から捉(とら)え、広げていく「種」が「ピース・シーズ」です。世界中に笑顔の花をたくさん咲(さ)かせるため、小学6年から高校3年までの49人が、自らテーマを考え、取材し、執筆(しっぴつ)しています。

紙面イメージはこちら

考える。書く。平和の願い

その① 被爆証言者への手紙

 証言が載(の)っている被爆者宛(あ)てに、感想を伝える手紙を書きました。証言を読んでどう感じたかを文にまとめることで、自分の考えをより深められたと思います。

 僕(ぼく)たちは河田和子さん(広島市南区)に手紙を書きました。学徒動員先で被爆し、父親たちを捜(さが)し歩いた体験を語った人です。印象に残った部分や、証言の内容を広く伝えていく決意を記し、自宅に持っていきました。

 手紙を読んだ河田さんは涙(なみだ)を浮(う)かべ「私の体験をきちんと捉(とら)えてくれました。若者の熱い思いが伝わってきてうれしい」と話しました。さらに、手紙の中身を踏(ふ)まえ、「憎(にく)しみを越(こ)えて心を伝え合うことは平和の原点。そこには人種も国境もありません」と語ります。平和への思いを間近で聞けてよかったです。

 手紙や感想文は、比較的手軽に考えを整理できる方法だと思います。皆さんも書いてみてはどうでしょう。(高2岩田壮)

河田さんに宛てて書いた手紙

 「原爆が落とされた時の河田さんの年齢は、今の僕と同じくらいです。僕も同じような状況になったら、河田さんと同じように頭の中は空白になっていたと思います」

 「家族を突然失うということもつらいだろうと思いました」

 「そんな経験をしながらも米国を憎まなかったというのがすごいと思いました」

 「戦争の経験から自ら前に進もうとする姿からは、私がジュニアライターを始めようとした時の気持ちを思い出しました」

 「学ぼうヒロシマ」の中の「記憶を受け継ぐ」に登場する被爆者への手紙や感想文を募集(ぼしゅう)します。長さは問いません。電子メール(kidspj@chugoku-np.co.jp)または郵送(〒730―8677広島市中区土橋町7の1、中国新聞社ヒロシマ平和メディアセンター「ピース・シーズ」係)でお寄せください。締(し)め切(き)りは9月9日です。寄せられた手紙・感想文はピース・シーズ編集部で取りまとめて届けます。中高生の皆さん、ぜひ書いてみてください。編集部Tel082(236)2714。(中3中川碧)

その② 壁新聞

 平和のために若い世代が「被爆体験をどう生かすか」をテーマに、「学ぼうヒロシマ」の中からエッセンスを抜き出し、1枚の壁(かべ)新聞にまとめました。

 タイトルは「伝えようヒロシマ~100年後に平和でいよう~」。平和の実現や記憶の継承へ向けてどんな行動ができるか、ジュニアライターの座談会で出た意見を抜き出しました。「学ぼう―」の読者と同世代の私たちが語り合っているので、身近で共感できる部分もあると思います。「あなたならどんなことができますか」という問い掛けも加えました。

 また、「原爆の子の像」など慰霊碑(いれいひ)や被爆建物をピックアップして紹介(しょうかい)。慰霊碑は建てた人の思いが通じやすく、被爆建物は視覚(しかく)を通して被害(ひがい)の様子を訴えます。

 5人で作りましたが、人によって伝えたいものはさまざまでした。新しい発見にもなりました。(高2新本悠花、中野萌)

その③ ポップ広告

 おすすめブックガイドの中の4作品について、書店にあるようなポップ広告を作りました。原爆関係の本は怖(こわ)いイメージがあるなど、とっつきにくい気がしたので興味を持ってもらえたらと思いました。作業を通じて本の中身や作者の思いをあらためて考えることができました。ポップに込(こ)めた思いはそれぞれ次の通りです。

 ■「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」
 「狭(せま)い視野こそが、世界を戦争に巻(ま)き込んだのではないか」という一文が印象的でした。その要素を基に紹介(しょうかい)文を書きました。作品に込められた平和への思いを表現するため、折(お)り鶴(づる)を添(そ)えました。(高2山田杏佳)

 ■「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」
 原爆は投下のその瞬間(しゅんかん)だけでなく、その先ずっと何代にもわたって傷痕(きずあと)を残してしまう、まさに「終わらない」ものです。「今でも終わらない被爆者の苦しみ」という表現を入れました。(高1溝上希)

 ■「おとなになれなかった弟たちに…」
 イラストを、本の挿絵(さしえ)と同じように鉛筆(えんぴつ)で描きました。色彩(しきさい)のない絵が、弟を失った作者の心情を表していると思えたからです。(中2藤井志穂)

 ■「おこりじぞう」
 お地蔵さまの怒(おこ)っている顔を特に大きく描きました。また、短いフレーズで、続きが読みたくなるようにしました。(小6森本柚衣)

 「学ぼうヒロシマ」は、中国新聞社が2013年から中学生・高校生向けに作っている平和学習新聞です。原爆に関する基礎(きそ)知識や被爆体験証言、被爆者を取材したジュニアライターの座談会のほか、理解度チェック問題やピース・クロスワードがあります。戦争・平和に関するブックガイド、証言の英訳も載っています。タブロイド判、カラー24ページ。被爆70年のことしは、被爆証言映像やジュニアライターの活動をまとめたDVDを初めて作りました。

(2015年7月9日朝刊掲載)

 私は「記憶を受け継ぐ」の感想を書いて、河田さんに直接届けに行きました。河田さんは手紙を読んで、とても喜んでくださったのでうれしかったです。また新たに新聞を作ることで、「学ぼうヒロシマ」あらためて一度、読む機会ができました。まだまだ、活用策はたくさんあると思うので、もっと「学ぼうヒロシマ」を生かしてほしいです。(中川)

 新聞を作ることで、記事を隅々まで読んだり、原爆をどのように同世代の人に伝えればよいかをグループで話し合うことができました。多くの中高生の人たちが「学ぼうヒロシマ」を読んで、話し合うことが原爆のことを忘れないために必要です。(新本)

 会議の時、グループのみんなが優しかったので、自分の意見を言うとき以外は緊張せず、楽しくできました。(森本)

 河田さんの家へ初めて行きました。ジュニアライターでの取材も初めてでした。河田さんは、手紙をあげたときすごくうれしそうで、喜んでくれました。また、家族の話やシカゴでスピーチした話から、河田さんの優しくて楽しい人柄が分かりました。すごくいい経験になりました。次からも積極的に頑張りたいです。(ウォルシュ)

 河田さんへの手紙渡しは、定期テストの真っ最中だったので参加を断念しました。「試験中は午後空いてるんだから来なよ」と同じグループの先輩に言われましたが、心の余裕と時間がないのでやめました。(藤井)

 「学ぼうヒロシマ」の新たな活用法を考えてみて、平和活動の新しいやり方を見つけられた気がします。「学ぼうヒロシマ」が僕の学校で配られたら、今回の「ピース・シーズ」を持っていき、友達に紹介したいです。より多くの人が実践してくれたらうれしいです。(岩田)

 自分たちがどんなことを伝えたいのかを話し合いながらオリジナル新聞を作りました。原爆の歴史や被爆者の証言など伝えたいことがたくさんあり、どれを選ぶか悩みました。一言で継承と言っても、伝えたいことは人によって違うと思うので、多くの人が継承していけたら、いろいろなことを知るきっかけにもなると思います。(中野)

 みんなで似たジャンルの本を読んだのに、ポップにするとそれぞれ違ったのがおもしろかったです。(山田)

 ポップを作るときに、私がまず思い出したのは、ジュニアライターで経験した被爆体験の取材です。被爆者は、自分のせいで子供や孫の体に影響を及ぼしてないか不安だと言っていました。その話を知っていたので、被爆2世がテーマになっていた「桜の国 夕凪の街」は、より心に刺さりました。(溝上)

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