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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 暴力の連鎖 どう決別 「仁義なき戦い」(1973年、深作欣二監督=東映)

 戦後の呉と広島で実際にあった暴力団抗争(こうそう)を描(えが)いた作品です。原爆によるきのこ雲の第1カットに続き、「戦争という大きな暴力こそ消え去ったが、秩序(ちつじょ)を失った国土には新しい暴力が渦巻(うずま)き…」というナレーションで物語は始まります。

 戦争で身寄りを失い、生活に困った若者たちは、無法地帯のような焼(や)け跡(あと)でやくざとなり、必死に生(い)き抜(ぬ)こうとします。しかし、敵対者を排除(はいじょ)して権力者へとのし上がろうとする親分に駒(こま)として利用されたり、仲間同士で殺し合ったりします。

 ひきょうな組長と若者の関係は、戦争を引き起こす国家と戦場へ送り出される兵士に似ています。規模は違(ちが)っても、国家間の戦争もやくざ抗争も構造は同じじゃないか、と感じました。終戦を迎(むか)えても再び争いに手を染め、いたずらに若者を死なせる大人の愚(おろ)かさも描かれた映画だと思います。

 暴力に傷ついてなお、人はなぜ暴力にのめり込み、決別できないのだろう。そう考えさせられるこの作品は、僕の中では揺(ゆ)るぎない「反戦映画」です。(高2松尾敢太郎)

(2015年4月14日朝刊掲載)

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