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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「夾竹桃物語 わすれていてごめんね」(緒方俊平 画・文) 心に広い視野 忘れず

 登場するのは、ハトとカラス、犬、そして夾竹桃(キョウチクトウ)。この本は、愚(おろ)かな人間が起こした戦争の犠牲(ぎせい)となった動植物が語る被爆体験記です。

 広島県立図書館にあった原爆に関する本のコーナーで「わすれていてごめんね」というタイトルにひかれ、手に取りました。「私に忘れていることってあったっけ」。幼い時からアニメや漫画(まんが)で原爆のことを学び、ジュニアライターになってからは被爆者の体験を聞いて記事を書くようになった私は、ヒロシマの被害についてはもう十分知った気になっていたからです。

 この本を読んで、原爆の犠牲になった命は人間だけではないという当たり前のことをすっかり忘れていた自分が恥(は)ずかしくなりました。

 終盤(しゅうばん)の現代のシーン、被爆した動植物の存在に気付き涙を流したのは少年です。成長するにつれて難しいことばかり考えて、頭を固くしてしまったり利己的になってしまったりしがちな私たち。彼のように広い視野でさまざまな立場の存在に配慮できる感受性を忘れないようにしたいです。(高1二井谷栞)

(2015年3月9日朝刊掲載)

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