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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「まちんと」(文・松谷みよ子、絵・司修) 真っすぐな言葉 胸に

 これは、原爆が落とされた時の幼い女の子とその母親を描いた絵本です。炎(ほのお)に包まれ、苦しみながら、女の子は母にトマトをちょうだいとねだり、亡くなっていきました。

 私が初めてこの絵本を見たのは、その幼い女の子より少し大きい5歳の時でした。ヒロシマのことはまだよく知らなかったけれど、漠然(ばくぜん)と怖(こわ)いもの、痛いものという印象がありました。ヒロシマについて知った今読むと、小さい頃(ころ)感じた「怖い」とは少し違う怖さを覚えました。

 私たちが暮らす広島で、こんな悲惨(ひさん)なことがあったのか。そして現在でも、市民が犠牲となる紛争(ふんそう)が世界各地で繰(く)り返(かえ)されている―。そう考えると、本当に恐(おそ)ろしいと思いました。

 小さい子どもも読めるように作られた絵本だからこそ、淡々(たんたん)と真っすぐな言葉で書かれています。私にとっては、難しい言葉をつらつら並べた本よりもずっと考えさせられました。戦争の醜(みにく)さや残酷(ざんこく)さが、痛々しいオレンジ色の炎や衰弱(すいじゃく)しきった幼い少女の姿に込(こ)められていました。(中3溝上希)

(2015年3月2日朝刊掲載)

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