[ジュニアライターこの一作] 「君たちには話そう かくされた戦争の歴史」(著者いしいゆみ)
16年10月24日
意思に反し極秘研究
この話は実話です。今の川崎市多摩(たま)区にあった登戸(のぼりと)研究所では、風船爆弾(ばくだん)や毒物、スパイ用のカメラなどを極秘で研究、製造していました。ここで働いていた人は「役所で働く」と言い、研究所のことを家族にも話してはいけなかったそうです。この本は、高校生たちが、働いていた人に取材するなど、研究所について調べていった話です。
研究員だった男性は嫌(いや)でも命じられた通りに研究しなければ生きる道がありませんでした。僕は、そんな経験はありません。
僕が嫌だと思うのは、宿題が多い、とか、苦手な授業がおっくうだな、という程度です。これらは将来のために、自分で納得してやっています。
しかし、当時の研究は、研究員が自分の意思でやっていることではないし、「嫌だ」と逆らえない状況(じょうきょう)でした。自分の力では何ともできなかったのです。
さらに、その男性は嫌々研究していたものの、いつの間にか嫌ではなくなったそうです。心が変えられたのです。それが「戦争」というものなのです。一人一人の個性を大切に、互(たが)いに尊重しあう事が平和への一歩だと思いました。(中1植田耕太)
(2016年10月24日朝刊掲載)