[ジュニアライターこの一作] 「アメリカン・スナイパー」(クリス・カイルほか著)
16年10月11日
米兵の考え方に衝撃
米軍の特殊(とくしゅ)部隊で多くの敵を射殺してきたクリス・カイルの自伝で、映画化もされました。
少年時代や戦地での経験、家族に対する思いなどが書かれています。「戦争をしてはいけない」というメッセージをストレートに伝える作品ではありません。
イラクでは、手りゅう弾(だん)を手にしていた女性を射殺します。しかし後悔(こうかい)はしていません。米国に敵対した女性の心に巣くっていた悪魔(あくま)を心底憎(にく)んでいる、とも表現しています。 また、敵との接触(せっしょく)によって被害(ひがい)が出るリスクを冒(おか)したくないという司令官を非難しています。
戦争のない世界を望むことが普通(ふつう)であると感じていたので、この本は衝撃(しょうげき)でした。米国のナショナリズムの中で、彼の考え方もコントロールされていたのかもしれません。しかし「戦闘(せんとう)をしない兵士は臆病(おくびょう)者に思える」「戦闘のスリルを味わいたい」といった米軍兵士のありのままの考え方は理解できないと思いました。
世界には宗教や国、文化の違(ちが)いによって、さまざまな考え方があります。その違いをいかに乗り越え、戦争をなくして平和な世界を築けるか、課題を突(つ)き付けられました。(高3林航平)
(2016年10月10日朝刊掲載)