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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 広島で元米兵従軍経験語る 戦場の悲惨さ 現代も

 アフガニスタンやイラクに駐留(ちゅうりゅう)していた元米兵2人の講演会「私、戦争してました~元米兵が語る現代の戦争」が広島市内であり、話を聴(き)きました。

少女の叫び声 耳に残る ヘインズさん

 マイク・ヘインズさん(40)=サンディエゴ=は18歳で海兵隊に入隊。2003年のイラク侵攻(しんこう)の時、特殊(とくしゅ)部隊として現地に行きました。

 通報を基に民家に押(お)し入(い)り、従軍可能な男性を捕(つか)まえます。しかし、通報の6割は事実無根でした。一般家庭に押し入ると家族はパニックになります。祖母が壁(かべ)に押し当てられ尋問(じんもん)され、それを見た6、7歳の少女が叫(さけ)びます。

 ちょうど、娘(むすめ)が生まれたころ。民家を襲(おそ)う日々に「テロリストと戦っているのではなく、自分がテロリストになっている」と感じました。少女の叫び声が今も耳に残っていて眠(ねむ)れない、と言います。

 「米国で育つことは、愛国主義と米国帝国主義を刷(す)り込(こ)まれること」。地元であった航空ショーでは、男の子がバズーカ砲(ほう)を構えたり、ライフル銃の銃口(じゅうこう)をヘインズさんに向けたりして、にこにこしていました。「子どものころから知らないうちに戦争が浸透(しんとう)し、愛国主義につながっている」

 沖縄県にある基地に駐留していたこともあり、現在は沖縄の米軍基地の辺野古移転反対のデモに参加するなどの活動をしています。

 僕は、「武器を使わず、新しい方法で平和を構築していく」というヘインズさんの考えに共感しました。どんな方法があるか、僕なりに考えていきたいです。(中3川岸言統)

住民が被害 戦闘を拒否 ファニングさん

 ローリー・ファニングさん(39)=シカゴ=は01年9月に起きた米中枢同時テロをきっかけに入隊しました。駐留したアフガニスタンでは、現金数万ドルを持って貧しい村へ行き「(武装勢力)タリバンの居場所を教えてくれたら数千ドルあげる」と言って、情報提供を募(つの)りました。通報の真偽(しんぎ)を確認しないまま、無関係だった家を襲撃(しゅうげき)し、そこにいた男性を袋(ふくろ)に入れて連れ去っていたそうです。

 一般住民が被害を受けているのを目の当たりにし、陸軍戦闘(せんとう)員としては初の戦闘拒否(きょひ)者になりました。戦争に反対したことで小ばかにされ、帰国した時も、近所の退役軍人から嫌がらせを受けたそうです。それでも、「自分が現地でしたことを考える時の方がつらい」と言っていました。

 米国では軍人の方が戦争反対論者より格好よく、ヒーロー扱(あつか)いされているそうです。しかし戦争は、現地の人たちだけではなく、軍人をも傷つけます。ファニングさんは何度も「みんなで手を取り合って訴(うった)えていけば、今の状況(じょうきょう)を変えていける」と話していました。私もその輪に入り、少しでも力になれたらいいなと思いました。(中3岡田日菜子)

(2016年12月5日朝刊掲載)

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