[ジュニアライターこの一作] 「ヒロシマを生き抜く」(ロバート・リフトン著)
16年9月26日
復興に隠れた苦しみ
米国の精神医学者ロバート・リフトン氏が、原爆投下から17年後の広島で被爆者にインタビューし、原爆が人々に与(あた)えた心理的影響(えいきょう)を分析(ぶんせき)しています。
一番驚(おどろ)いたのは、被爆後の復興についての記述です。人間の生命力を思い知らされたという人がいる一方で、「広島が本当に復活したという気がしない」と快く思わない人もいたのです。復興の陰(かげ)で、小さなバラックに住み、本当に苦しんでいる人たちの存在が隠(かく)されていたためです。
今までは、復興を遂(と)げた「平和都市」という明るいイメージを強く感じていました。しかし貧困に悩(なや)んだり、身体が不自由になったりした人たちがいた事実を忘れてはいけないことに気づかされました。
被爆していない私たちは本当にヒロシマを理解し、被爆者に寄(よ)り添(そ)えてきたのでしょうか。そんな疑問を私に投げ掛けてくれました。
これから被爆者から話を聞く時は、心の奥底(おくそこ)の気持ちを理解するように心掛けたいです。そして多角的な視点で、原爆について学びたいと思いました。(高3高矢麗瑚)
(2016年9月26日朝刊掲載)