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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「夏休みの地図」(2013年、深作健太監督)

古里への思い未来へ

 被爆地広島で暮らす小学生が、夏休みの宿題である「街の地図」作りに奔走する物語です。

 主人公の健斗は最初、思うように地図が描けません。しかし、父親の古里への思いを知り、自分だけの地図を描こうと街を歩きます。

 原爆の惨禍(さんか)を乗(の)り越(こ)え、営業を再開させた薬局の話を聞いたり、復興の象徴(しょうちょう)でもあるお好み焼きの店を訪れたり…。原爆によって焦土(しょうど)と化した広島を復興に導いた先人たちの存在を知るのです。

 スクリーンには、広島駅周辺の様子も映し出されます。戦後の面影(おもかげ)が残る商店街や建物です。しかし、再開発で姿を消し、今は見ることができません。街並みが消えても、人々の復興への努力を忘れないようにしなければならないと思います。

 この作品には、広島を再生させた被爆者の孫世代が、古里への思いを未来へつないでほしいという思いが込められていると感じます。それはかつての広島のように、地震(じしん)による被害を受けながらも、復興を目指している東北や熊本へのメッセージでもあると思います。(高3松尾敢太郎)

(2016年9月5日朝刊掲載)

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