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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「よしこがもえた」(作・たかとう匡子、たじまゆきひこ)

戦火で失う命の重み

 この本は、作者のたかとう匡子(まさこ)さん自身の体験をもとにしています。神戸の空襲(くうしゅう)で家を失い、逃げてきた姫路(ひめじ)(兵庫県)では妹をも失う。そんなことが当たり前に起こってしまう時代が、70年余り前にあったという事実が信じられません。

 印象に残っているのは、主人公の妹よしこが焼夷弾(しょういだん)で焼かれ、「オ テ テ キレイニ チ テ」と言って息絶えたシーンです。よしこの腕(うで)や胸は、皮膚(ひふ)がべろんとずり落ち、水ぶくれがつぶれ、全身が焼きなすのように焦(こ)げていました。

 そんな中、自分がかろうじて見えているであろう腕をきれいにして、まだ生きたいという思いが伝わります。そして、この本の最後にある「このころ世界中のたくさんのよしこが死にました」の一文。どんな時代に生きていようが、命はとても大切だと分かりました。

 現在も、世界各地でテロや紛争(ふんそう)が起きています。第2次世界大戦中だけでなく、今も世界のどこかで、生きたいと望んでいるのに生きられない子どもたちがいます。そんな現実があるからこそ、命の重みを真剣(しんけん)に考えなければなりません。(中2斉藤幸歩)

(2016年12月5日朝刊掲載)

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