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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「天に焼かれる」(作・絵 金崎是) 炎の町 同じ立場なら…

 作者の金崎是(すなお)さんの体験が基になっています。金崎さんは原爆が投下された後、妻と子どもたちを捜(さが)して歩きます。真っ黒な死体でいっぱいの軍用トラック、皮膚(ひふ)が焼けただれながら手を前に出して歩く人々、炎(ほのお)に包まれた広島の町…。「天に焼かれる」と繰(く)り返(かえ)し、泣きながら歩いている人たちもいました。

 親元に帰りたいと叫(さけ)ぶ少女にも出会います。しかし、どうすることもできませんでした。もし僕が同じ立場になったら、どんな判断を下すのか想像もできません。生きている人を見捨てるのはとても心苦しいことだからです。

 金崎さんの身内も全身に赤黒い斑点(はんてん)ができたり、ミイラのような姿になったりして亡くなりました。現実を受け入れられないまま、大切な人を見送った人は多いと思います。生き延びた人をも苦しめる原爆を決して繰り返してはいけません。

 最後はこう結んであります。「原爆はわたしたちだけで十分なのです」

 僕たち若者はもっと原爆について知り、未来について考えなければいけないと思います。原爆被害の実態について詳(くわ)しく知りたい、という人に読んでもらいたい作品です。(高3中原維新)

(2016年8月22日朝刊掲載)

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