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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「原爆供養塔」(堀川恵子著) 遺族を捜す姿 心打つ

 平和記念公園(広島市中区)にある原爆供養塔(とう)には、約7万人の引き取り手のない遺骨が眠(ねむ)っています。戦後、供養塔の「墓守」として清掃(せいそう)をし、遺族を捜し続けた佐伯敏子さんの姿に心を打たれました。

 建物疎開(そかい)作業に出ていて亡くなった娘(むすめ)の遺骨が、親元へ戻った時のエピソードに感動しました。佐伯さんが捜し当てた少女の父は、泣きながら遺骨が入った木箱を胸に抱きます。それからしばらくして、がんで亡くなりました。生きているうちに引き取られ、本当に良かったと思います。

 供養塔の中には名前が判明している遺骨もあります。原爆投下後、遺体の収容作業をし、名前を記録していった少年兵たちがいたのです。川から遺体を引き揚げたり、木材を集めて遺体を焼いたり…。1日当たり少なくとも50~60体分の記録を取ったと記憶している人もいました。少年兵が私と同じくらいの年齢(ねんれい)だったと考えると、とても恐(おそ)ろしいと感じました。

 以前、学校の活動で横浜市の高校生に原爆供養塔について説明したことがありますが、塔の成り立ちや佐伯さんの存在については詳(くわ)しく知りませんでした。原爆で亡くなった人がどんな人生を歩み、どう葬(ほうむ)られたのか。原爆に関する知識だけでなく、犠牲(ぎせい)者一人一人に思いをはせることが大事だと感じました。大切な人を失った遺族の気持ちも忘れないようにしたいです。(高3福嶋華奈)

(2016年7月4日朝刊掲載)

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