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ジュニアライター発信

Peaceあすへのバトン 10年目のジュニアライター卒業生の今 会社員・楠生紫織さん=呉市

絵本通じ豊かな出会い

 一人一人に合った絵本を提供したい―。大学卒業後、そんな思いで書店に勤め始めて2年目。児童書を受け持ち、注文から入荷、棚の展開、販売までやっています。

 元保育士の母親が絵本好きで、自宅の本棚には子どものころから多くの絵本が並んでいました。お気に入りだったのが「わたしのワンピース」。何度も読み、絵本が好きになるきっかけになりました。

 大学2年から4年までアルバイトした「京都市こどもみらい館子育て図書館」では、年配の図書館員にロングセラーの絵本を教えてもらいました。「いろんな教訓が織り込まれていて大人も学べる。さまざまな人に絵本を売る書店員になりたい」と考えたのです。

 店頭では、いろんな出会いがあります。昨年夏には「孫に絵本を贈りたい」と来店した女性と、孫の年齢や性別、好きな物などを聞きながら一緒に選びました。それから約半年後、同じ女性が来て声を掛けられました。「自分を覚えてくださっていてうれしかった」。毎週土曜の午後に店内で催している絵本の読み聞かせでは、常連の親子に店頭で声を掛けられ、「面白かった」「この本も読んで」などと言われることもあります。

 昨年10月からは、店内にあるイベントスペースの企画も担当しています。今は、8月6日の広島原爆の日に向けて、ヒロシマや平和に関する本を30~40冊紹介。「ヒロシマ以外の抽象的な本も入れて、興味を持ってもらえるようにしている」と狙いを話します。

 棚には、ジュニアライターをしていた時に取材した米国出身の詩人アーサー・ビナードさんが翻訳した「キンコンカンせんそう」も置きました。「平和は勃発するが、戦争は長い準備があって起きるため勃発はしない、という部分に納得した」と薦めています。

 オバマ米大統領の広島訪問を受けて、オバマ氏関連の本も並べています。「時事関係の本は、お客の関心も高い。店頭で聞かれることもよくあるので、きちんと知っておかないといけない」。そのため、通勤時と昼休憩に新聞を読むのも日課です。

 新聞記者になりたくて始めたジュニアライター。記者の道はかないませんでしたが、「いろんな視点で考え、どう質問をしたら相手が答えてくれるか、を学んだ。それは今も生きている」と言います。

 活動を通じて、価値観も変わりました。取材で体験した農家民泊。自然と暮らす人たちに触れ、「お金をたくさん稼ぐイコール幸せじゃないと知った」。物ではなく、家族や友人に囲まれた生活を優先しようと、大学を卒業して京都からUターンしました。

 今は、絵本専門士と絵本コンシェルジュの資格を取るのが目標。「絵本の専門知識を身に付けて接客するのに加え、資格を取って各店舗を回り、売り場の提案や絵本のワークショップをしたい」(二井理江)

(2016年6月27日朝刊掲載)

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