[ジュニアライターこの一作] ぼくは戦争は大きらい(やなせたかし著)
16年5月17日
「飢え」なくし 共存を
「アンパンマン」の作者として知られる漫画(まんが)家、故やなせたかしさんの戦争体験や平和への思いがつづられています。
やなせさんは1940年から5年間、日本陸軍の兵隊でした。戦車に見立てた大八車を使った訓練や、中国で敵の攻撃(こうげき)から命からがら逃(に)げたことなどが事細かに書かれています。
戦争の悲惨(ひさん)さよりも、愚劣(ぐれつ)さを感じさせる内容。易しい言葉を使って書かれているため、読みやすいです。今まで戦争に関する本を読んだことがない人に、手に取ってほしい一冊です。
やなせさんは戦争の原因を、「『飢(う)え』と『欲』ではないか」と考えています。アンパンマンで描こうとしたのは、分け与えることで飢えがなくせ、嫌(いや)な相手とでも一緒(いっしょ)に暮らせるということ。それを、「若い人たちが真剣(しんけん)に考えてくれればうれしい」と結んでいます。
この本が発行される約2カ月前に、やなせさんは亡くなりました。私たちへのラストメッセージを受(う)け継(つ)いでいかなければならないと感じます。
幼いころ大好きだったアンパンマン。この本を読んで、もっと好きになりました。(高2正出七瀬)
(2016年5月16日朝刊掲載)