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ジュニアライター発信

人間爆弾の悲劇を映画に 「サクラ花」広島で上映 ジュニアライターが監督取材

 第2次世界大戦末期、日本海軍が実戦投入した有人の飛行機型爆弾「桜花(おうか)」をテーマにした映画「サクラ花―桜花最期の特攻」が、広島市西区の横川シネマで上映されている。舞台あいさつのため広島を訪れた松村克弥監督(53)に、中国新聞ジュニアライターが制作の動機などを聞き、感想をつづった。

 桜花は、全長約6メートルの小型飛行機の頭部に約1・2トンの爆薬を積み、運搬用の飛行機「一式陸上攻撃機」につるされて敵の艦船に接近、尾部に装備したロケットを噴射してパイロットごと敵艦に体当たりさせる人間爆弾。

 映画は、激戦地の沖縄に向かう一式陸上攻撃機に搭乗した8人を追う。敵機グラマンから攻撃を受け、仲間が次々倒れていく展開。

 松村監督は、テレビのドキュメンタリー制作中、母の実家があり第二の古里ともいえる茨城県に訓練基地のあった「桜花」の悲劇について知り、映画制作を思いついた。「見た人に平和のありがたみや命の大切さが分かってもらえるのではないか。桜花には今の高校生ぐらいの若者が乗っていた。同世代の人に見てほしい」などと、ジュニアライターの質問に答えていた。

 さらに「普通の人も戦争が変えてしまう。特攻は決して昔話ではなく、美しく格好よいものではなかった」とも指摘した。

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 上映は21日まで、午前10時から毎日1回。87分。横川シネマTel082(231)1001。

同年代の搭乗員 倒れる姿に衝撃

 何の予告もなく搭乗員たちが次々と銃弾に倒れる様子が衝撃的でした。思わず目を背けたくなるほど悲惨。特攻をしても戦果につながらないどころか、味方の命がどんどん奪われていくのに、なぜこんな無謀なことをするのでしょうか。

 今だからこそ疑問を感じられますが、当時の徹底した軍国主義に加え、敗戦濃厚な中、少しでもお国のためになるならと自ら特攻に志願した人がいたのも事実です。そんな悲しい時代が繰り返されないよう、特攻で散った隊員たちと同じ年代の私たちが努力しなければと思いました。(中2目黒美貴)

(2016年5月16日朝刊掲載)

映画「サクラ花」感想

 敵の戦闘機や軍艦の映像が少ないのが印象的でした。狭い機体の中にいる搭乗員たちの、どこから弾が来るか分からない緊張感や、閉鎖空間で仲間の死体や血痕が増えていく息苦しさが伝わってきます。

 終盤で主人公が棒立ちになり絶叫するシーンが特に強烈でした。松村監督は「内部から崩れていく様子を映した。彼は狂気の手前まで行っていただろう」と話しました。私だったら正気を保てないと思います。「特攻は美しく国のための立派な犠牲、そんなきれいごとではなく、汚く恐ろしい所に焦点を当てた」。戦争で死んでいった若者の現実を切り取った、重い作品だと感じました。 (中3藤井志穂)

 一人、また一人と体から血をふきあげて死んでいく攻撃機の中で、特攻機「桜花」に乗り込む少年を送り出す。たった70年ほど前の日本の話とは思えない。それだけ平和になったということであり、歴史が忘れられているということでもあると思います。そんな戦争を知らない私たちにダイレクトに戦争の実相を訴えかける映画でした。多くの尊い命の上に今があることを忘れてはいけないと思いました。(高2正出七瀬)

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