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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「私たちが子どもだったころ、世界は戦争だった」(サラ・ウォリス、スヴェトラーナ・パーマー編著)

食べ物奪い合う現実

 第2次世界大戦中に7カ国16人の10代の子どもたちが書いた日記や手紙が収められています。初めは、戦争でつらい思いをした体験記が集められているのだと思っていました。

 しかし、日々の悩(なや)みや恋の話なども書いてあり、読みやすくて驚(おどろ)きました。文章の中に戦争をうかがわせる記述もあり、日々の生活に戦争が入(はい)り込(こ)んでいたことも分かります。

 一番心に残ったのは、ロシア(当時ソ連)で母、妹と暮らしていたユーラ・リャビンキン少年の日記です。彼の住んでいたレニングラード(現サンクトペテルブルク)はドイツ軍に包囲されて食糧難に陥(おちい)りました。栄養失調で動けなくなったユーラは、疎開(そかい)する家族に置いていかれ、餓死(がし)します。

 彼が残した日記には、家族とさえも食べ物を奪(うば)い合(あ)う様子が生々しく記してありました。命への激しい執着(しゅうちゃく)について、本音を隠(かく)さず書いているので、読んでいて恐(おそ)ろしいとも感じます。でも、それが当時の現実だったのです。

 それを忘れないようにするとともに、毎日に不安を感じなくてはならない世界にはしたくないと思いました。(高1上岡弘実)

(2016年5月2日朝刊掲載)

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