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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「なぜ戦争はよくないか」(アリス・ウォーカー文、ステファーノ・ヴィタール絵)

醜さあぶり出す技法

 読んだ後に吐き気を催(もよお)すほど強烈でした。戦争の醜(みにく)さを表現している絵や文章など全てから、強い印象がたたきつけられます。

 さまざまな技法を使った鮮(あざ)やかな絵が戦争の緊張(きんちょう)感を出しています。人が暮らし子どもが遊ぶきれいな村が、次のページで大きな車輪につぶされます。兵士たちを溶(と)かしヘドロのようにどろどろくねったものが、高波になってしぶきを上げる絵が出てきます。同じように、液体が崩(くず)れた人間の形をとり、母子を包む描写(びょうしゃ)もあります。

 文も詩に近いです。「人のからだをむしばむ異臭(いしゅう)や 思いもよらない副作用のことなど 戦争はけっして考えないのよ」と、戦争を擬人(ぎじん)化して表現。戦争は自己中心的だと感じました。

 「ひとくち飲むごとに みんなを病気にしてしまうのが 戦争のしみこんだ水なの」と例えた文は、以前取材した被爆者の「やけどした人に『死んでもいいから水をください』とすがりつかれた」という証言と重なりました。戦争で汚(よご)れた水さえも欲しかったその人の心情を想像すると悲しくてやりきれなくなりました。抽象(ちゅうしょう)的なだけに、戦争のえたいのしれない不気味さと気持ち悪さがにじみ出ています。(中3藤井志穂)

(2016年4月25日朝刊掲載)

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