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ジュニアライター発信

Peaceあすへのバトン 10年目のジュニアライター卒業生の今 大学生・植木史織さん=パリ

仏で児童と折り鶴交流

 日本で通っている大学の派遣留学生として、昨年8月からパリ第7大で学んでいます。これまでと全く異なる文化の中で暮らして8カ月。将来の目標も具体的になってきました。

 「留学に行ける機会があれば行ってほしい」。小さい頃から父に言われていました。大学時代にフランス文学を専攻したものの、留学の夢をかなえられなかった父。自身も「留学するならフランスへ」と思うようになりました。フランス語が話せれば仕事の幅が広がる、とも考えました。

 さらに、大学のゼミで開発経済を勉強し、女性の社会進出に興味が湧きました。背景には、ジュニアライターの取材で、弱い立場にある女性や子どもが人身売買の対象にされている実情を知ったこともありました。「男女平等が進んでいるとされるフランスでヒントを学べるかも」と留学を決めました。

 フランス語ができない状態で渡仏したので授業が大変なのはもちろんですが、移民の多さに驚きました。「パリは移民でつくられている」と思うほどです。街を歩いていると、男性3人組に「マッサージ1時間いくら」と声を掛けられたり、別の人にすれ違いざまに「中国め」と言われたり。彼らはフランス人には言いません。「自分より弱く見える外国人を差別する人がいる」と感じます。

 昨年11月に起きたパリ同時多発テロの現場は、住んでいるフランス政府の寮から地下鉄で10分ほど。ずっと部屋でニュースを見ていました。「すぐそばの病院にひっきりなしに救急車が行き来していて怖かった」と振り返ります。

 そして、テロ発生の2日後。フランス軍のシリア空爆に衝撃を受けました。「反撃という方法があり、こうやって戦争が始まるんだ」と実感しました。

 広島で育ったからこその平和への意識。ジュニアライターで学んだ「伝えることの重要さ」。フランスでも平和活動をしたいと、高校時代に講演を聞いた、フランス平和首長会議顧問の美帆シボさんに連絡しました。1月にパリ近郊、シボさんの住むマラコフ市の市役所で開かれた平和学習に参加し、小学5年生に鶴の折り方を教えました。

 作った鶴を持ってきて「サダコに渡してね」と言う子がいました。「こんなに純粋な心を持っていたら戦争なんてしないだろう。このまま大人になってほしい」と願います。

 将来の目標も見えてきました。それは、有機栽培の材料を使った冷凍食品の日本での普及です。パリのスーパーには、有機栽培の野菜や冷凍食品、レトルトなどが多く並んでいます。「これなら抵抗なく使えて家事の負担が減り、日本の女性の社会進出に貢献できる」と考えます。

 6月初旬に帰国後、12月からは半年間、高校の修学旅行で訪れたドイツ国際平和村でインターンシップをする予定です。紛争などで傷ついた子どもを治療し、母国に帰す取り組みに「ただただ、少しでも力になれたら」。思い切って飛び込みます。(二井理江)

(2016年4月25日朝刊掲載)

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