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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「ビルマの竪琴」(竹山道雄著) 敵同士 心通わす音色

 太平洋戦争でビルマ(現ミャンマー)にいた水島上等兵の動きを、彼が属していた小隊の一兵士が語る形で書かれています。水島上等兵は、戦闘(せんとう)で亡くなった日本兵を弔うため、脱走兵(だっそうへい)となって現地で僧(そう)になると決意します。

 まずこの決断に驚きました。ビルマで僧になると、もう日本に戻(もど)れず親に会うこともできないかもしれません。それでも一人でこの国に残ろうというのです。

 彼がそう決めたのは、祖国を離(はな)れた戦地で多くの日本兵が亡くなり、そのまま野ざらしとなっている状況(じょうきょう)に心を痛めたからです。せめて全員をきちんと葬(ほうむ)ってあげたい―。こんな気持ちを行動に移したのです。立派で勇気あることだと感じました。ただ、彼のそうした行動は、戦争があったため。戦争のむごさをあらためて思いました。

 話の中では、彼が竪琴(たてごと)で奏でる「はにゅうの宿」をきっかけに、交戦寸前だった敵同士が心を通わせていくというシーンもあります。このときは、音楽が戦いを未然に防いだのです。

 戦争は残酷(ざんこく)です。戦いを始めるより前に、みんなもっと平和を築くことに力を注ぐべきだと考えさせられました。(高1中川碧)

(2016年4月12日朝刊掲載)

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