[Peaceあすへのバトン] 10年目のジュニアライター卒業生の今 大学生・矢田瑞希さん
16年2月22日
世界とのつながり開拓
大学生 矢田瑞希さん(20)=神戸市
「平和で、人々の可能性が最大限発揮された社会の実現」。大学の新入生向けサークル紹介の冊子に書かれていた理念に引かれ、アイセック神戸大学委員会の活動に打ち込んできました。広島に生まれ育ったからこそ、「平和」という言葉に共感できたと思っています。
126カ国・地域に広がる世界最大の学生団体、アイセック。海外の学生が日本の企業でインターンシップを受ける世話をしたり、逆に日本の学生が海外でインターンシップをするサポートをしたりします。実際に神戸や大阪の企業を回って受け入れ先を開拓。中でも大変だったのは、台湾で日本人学生の受け入れ先を探すプロジェクトでした。
「日本人を受け入れやすいだろう」と、まずは現地の日系企業を対象にしました。約100社に電子メールを送りましたが、面会できたのはわずか5社。昨年夏、台湾に行ってからは「飛び込み営業」にも励みました。「『日』の漢字が入っている会社の看板を見ては、呼び鈴を押していた」と振り返ります。午前中に企業を回り、午後はコーヒーショップで作戦を練る毎日。「しんどいわ、って泣いていた」
しかし、日系企業の駐在員が集まる居酒屋に誘ってもらったり、ホームステイした現地のアイセック仲間に励まされたりしたことも。「いろんな出会いに助けられた。やっててよかったなあ、と感じられた」。3週間の滞在で3件の契約ができました。
受け入れ先を探すだけではなく、マレーシアの児童養護施設で6週間過ごしました。少女15人の世話をしながら「自分に何ができるんだろう」と考えました。彼女たちを撮影して「世界は広いんだよ」「夢をしっかり持ってね」の思いを込めて約7分のビデオを作り、見せました。
香港で開かれたアイセックの国際会議にも出席。20カ国・地域から集まった200人が、貧困問題などの世界情勢や事業の改善点を議論したのです。
平和活動に関心を持って入ったジュニアライターでは、平和について身近に感じられただけでなく、思いを形にする充実感を得た、と言います。「特集するテーマをみんなで決めて取材に行って紙面にする。目的を持って形にする大切さを学んだ」。これからも自身の人生のテーマ「平和を望む」を根っこに、グローバルに活躍したい、と夢を描いています。(二井理江)
アイセック(AIESEC)
第2次世界大戦のような戦争を二度と起こさないようにしようと、1948年に欧州で設立された。若者のリーダーシップ育成を目的とするNPOで、今は126カ国・地域に広がっている。日本では25大学で活動している。
(2016年2月22日朝刊掲載)