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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「原爆と検閲」(繁沢敦子著)

良心より愛国心 衝撃

 この本は、原爆について、米国の報道機関に対する検閲(けんえつ)と、それが米国人の原爆への考え方に、どんな影響(えいきょう)をもたらしたのかを検証しています。

 検閲は、原爆の惨状(さんじょう)を世界に伝えるのを妨(さまた)げ、被爆の実相への無知や無関心を引き起こしました。もっと報道されていれば、核兵器(かくへいき)をめぐって異なる世論がつくられ、今ほど核兵器が広がらなかったかもしれません。

 ただ、報道に関係なく、米国では原爆の悲惨(ひさん)さが受け入れられなかった可能性もある、と筆者は述べます。被爆後に広島を訪れた米国人記者が、米国人の捕虜(ほりょ)の死を知っても「戦争だから仕方ない。原爆投下は正しかった」と考えたからです。記者たちは愛国心から情報を自主規制していた、と筆者は結論付けています。

 私は今まで、同じ人間なら原爆の悲惨さや被爆の痛みに共感でき、被爆の実態を知れば核に反対すると信じていました。しかし、戦時中の米国では愛国心が人としての良心に勝っていたと知って驚(おどろ)き、ショックを受けました。これからは、それぞれの人の背景を踏(ふ)まえて原爆のことを伝えたいです。(高2高矢麗瑚)

(2016年2月16日朝刊掲載)

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