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ジュニアライター発信

ジュニアライターが聞く 広島の復興「希望」に コンゴで活動 UNHCRの木村さん 

難民らの争い 解決へ努力

 内戦の続くシリアなどから欧州(おうしゅう)に押し寄せる難民が関心を集めています。武力紛争(ぶりょくふんそう)や人権侵害(しんがい)から逃(のが)れるため国境を越える難民はアフリカでも発生し、問題になっています。舟入高(広島市中区)の卒業生で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のスタッフとしてアフリカのコンゴ(旧ザイール)北部で活動中の木村真紀葉さん(28)が一時帰国したのを機に、現地の様子や思いを聞きました。(上岡弘実、15歳、鬼頭里歩、14歳)

 ―なぜ、難民が発生したのですか。
 隣国(りんごく)の中央アフリカはフランスから独立した1960年以降、政府と反政府派による戦闘(せんとう)が続き、国外に避難する人も増えていった。受け入れを決めたコンゴでは北部の国境に難民が押し寄せたが、長期化に伴い、限られた物資をめぐって現地住民との間で争いが起きた。UNHCRが2013年から現地で活動を始めた。

 私の仕事は難民と住民、または難民同士の争いを仲裁し解決を図ること。例えば現地は電気やガスが通ってなく、難民と住民が調理に必要なまきをめぐって対立。伐採する量を制限し、資源を守るため、話し合って決めてもらっている。

 ―どんなことに気をつけていますか。
 一つ一つの問題に真剣(しんけん)に向き合うこと。解決策が見つからず言い訳したい時もある。しかし、一生懸命に考えることで少しでも解決につながるようしている。

 現地には男性優位の風潮があり、会合で女性は話しづらい。そこで、男女のグループを別々につくるなどして女性も話し合えるよう工夫している。

 ―課題は何ですか。
 命からがら逃げてきた難民の体験は心を打つ。だが、キャンプで過ごすうち「もらうこと」に慣れるのも事実。キャンプ内の掃除(そうじ)を呼び掛けても「やると何かもらえるか」と質問される。「きらきら星」を替(か)え歌にして「汚いものはよくありません。集めて捨てましょう」と促(うなが)して、ようやく参加してもらった。援助(えんじょ)への慣れは人道支援(じんどうしえん)の欠点であり、大きな課題だ。

 ―どうしてこの仕事を始めようと思ったのですか。
 高校生の時、国際活動に関心を持ち始め、国連で働きたいという夢を持ったのがきっかけ。広島で生まれ育ち平和の大切さを学んできたので、今の仕事で貢献(こうけん)しようと決めた。だから過酷(かこく)な環境でも耐(た)えられる。

 武力衝突や紛争は、人間の知恵と努力で、ある程度予防できる。しかし一度起きると、ダメージは大きい。修復に時間とエネルギーが要る。そうならないよう努めなければいけない。

 ただ、紛争で破壊された国の人にはこう話す。「広島は原爆で何もかも破壊されたが、自分たちの手で街をつくり直し発展させた。だから一緒に頑張ろう」。広島の復興は「希望」になりうるのではないか。

(2016年1月18日朝刊掲載)

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