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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 世界食糧計画 焼家さんに聞く

貧困や飢餓 関心持って 「小さな一歩も成果生む」

 貧困や飢餓(きが)も平和を脅(おびや)かす問題です。広島市西区出身で、講演のため母校の広島女学院中・高を訪れた国連世界食糧(しょくりょう)計画(WFP)日本事務所代表の焼家(やきや)直絵さん(44)に、中国新聞ジュニアライターが聞きました。(高2中川碧)

  ―どんな活動ですか。
 貧困という身近な問題から平和を目指すことを目標にしています。まず支援(しえん)が必要な場所へ食糧を届けます。ブータンでは3時間ほど山道を歩き、ロバやヤクで学校給食を運びました。体力的にしんどかったですが、子どもたちが喜んで食べる姿を見て心が洗われました。ただ人々が支援に慣れ依存(いぞん)しないよう、強い国家をつくる長期的な計画も一緒(いっしょ)に考えます。

  ―大変な仕事ですね。
 エボラ出血熱が流行した西アフリカのシエラレオネには、志願して向かいました。空気感染することはないのに「(患者(かんじゃ)に)近寄りたくない」という偏見もありました。でも一番必要とする人の元へ行かないのはおかしい。人道支援が私の使命。感染に注意して活動しました。

 現地で一緒に活動した職員の中には日本に帰国後、友人の結婚式への出席を断られた人もいたそうです。紛争(ふんそう)による難民も同じ。自分に原因がないのに周りから虐(しいた)げられる環境(かんきょう)は防がないといけません。

  ―WFPに入ったのは、なぜでしょう。
 中高生の頃、三浦綾子さんの小説「塩狩峠」を読み自己犠牲(ぎせい)の形を知りました。若い鉄道職員が身を投げ出し暴走する汽車を止める話です。自分は命を差し出せなくても、人のために役立つ尊さを感じました。留学生と触(ふ)れ合ううち海外で働きたいと考えるように。被爆地で平和教育を受けたのも重なり、恒久(こうきゅう)平和をうたう国連職員に憧(あこが)れ始めました。

 大学卒業後、非政府組織(NGO)の活動で世界を回り、WFPに興味を持ちます。目に見える形で支援できるのが自分に向いているように思えたからです。

  ―若者へメッセージを。
 日本に住んでいると貧困や飢餓は「遠い国のこと」と感じるかもしれません。しかし今、世界はボーダーレス。海外から人が訪れ、自分も海外に出て行く時代です。関心を持ち、小さな一歩でも大きな成果を生むことを知ってほしい。

(2017年11月20日朝刊掲載)

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