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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「さよなら、アルマ」(水野宗徳著)

軍用犬と飼い主の絆

 太平洋戦争中は、犬も戦場に送られ戦いに加わりました。「軍用犬」といいます。作品は1歳3カ月で旧満州(中国東北部)に向かった「アルマ」と、飼い主・太一の物語です。言葉は交わせなくても心を通わせ合う、犬と人の絆(きずな)が感じられます。

 戦争が始まり食べ物が少なくなる中、シェパードだったアルマを生かすには軍用犬にするしかありませんでした。苦悩(くのう)の上、太一は愛犬に訓練を受けさせます。そこにアルマへ召集令状が届き、離れ離れに。再会を誓(ちか)った太一は訓練士の資格を取り、後を追い掛(か)けます。

 太一と一緒になった戦場で、アルマが敵兵5人を襲(おそ)う場面は衝撃(しょうげき)的です。爆竹(ばくちく)音でさえ嫌いだった頃に比べ、あまりにたくましく変わったからです。軍用犬は作戦の伝令や見張り、敵兵の捕獲(ほかく)などを目的に日本軍だけでも10万頭が駆(か)り出されましたが、ほとんど戦地から帰れなかったそうです。

 私も雄(おす)と雌(めす)の柴(しば)犬を飼っています。しかし、なつく2匹が戦場に行って人にかみつくと想像すると怖(こわ)くなります。犬も、大切な家族。急に合えなくなり、戦場に取り残されてしまった事実が過去にあったと思うと、とても寂(さび)しい気持ちに浸(ひた)ります。(中2森本柚衣)

(2017年9月12日朝刊掲載)

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