[ジュニアライターこの一作] 「ナガサキ 消えたもう一つの『原爆ドーム』」(高瀬毅著)
18年6月18日
核の被害 どう伝える
母が長崎県出身なので、自分も長崎の原爆資料館に行ったことがあります。そこで読んでみようと思ったのが、この本。題名は、原爆でボロボロになった浦上天主堂というカトリックの教会を指しています。
被爆後の天主堂の写真を見て、息をのみました。うずたかく積もったがれき、首から上がない聖マルコ像…。大きな傷痕(きずあと)に触(ふ)れて、長崎の人もつらい経験をしたと分かりました。しかし1958年に、壊(こわ)れた天主堂は撤去(てっきょ)されます。この本はその背景を探っています。
「歴史の証人」として保存を求めた市議会に対し、当時の市長は姉妹都市となった米国セントポール市などを訪れてから、撤去を決めました。天主堂は色とりどりのガラスが美しい姿に生まれ変わりました。
原爆の被害(ひがい)をどう伝えていくか。ジュニアライターの自分も考えました。広島には原爆ドームという「証人」がまだ残り、見る人を圧倒(あっとう)します。しかしこのドームも、いつかなくなる日が来るかも。その時、肉眼で見た自分たちがその姿を後世へ伝え、原爆の恐(おそ)ろしさを理解してもらうことが必要になると思います。(高2川岸言統)
(2018年6月18日朝刊掲載)