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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「レッドクロス~女たちの赤紙~」(TBS)

看護師 戦地での苦難

 戦後70年の2015年に、TBSテレビが制作したドラマのDVDです。第2次世界大戦中、旧満州(中国東北部)へ派遣(はけん)された日本赤十字社の看護師たちが、戦時下で運命を翻弄(ほんろう)されながら、家族との別れや苦難を乗り越(こ)え、懸命(けんめい)に生き抜く姿が描(えが)かれています。

 男性が次々に兵隊となる中、主人公の天野希代は「女性でもお国の役に立ちたい」という思いを抱(いだ)き、看護師になりました。武器を使うのではなく、負傷兵を治療(ちりょう)する立場で戦争に参加したのです。私は、希代がそう思うようになった当時の時代背景を恐(おそ)ろしいと感じました。

 ドラマでは、人間と人間が殺し合う場面が何度も登場し、次々に無残な姿で殺されます。国のために人を殺し、自分の命をささげる生き方は、間違(まちが)った正義感だと思います。戦争が人間の正常な判断力を奪(うば)ってしまう恐ろしさを再認識しました。

 一方で、希代は満州開拓団(かいたくだん)として現地で農業を営んでいた男性と結婚(けっこん)。一人息子に恵(めぐ)まれましたが、終戦間際の混乱で、長男と生き別れになります。中国残留孤児(こじ)となり、中国人に育てられた長男はその後、医師を目指しました。どんな環境(かんきょう)に置かれても諦(あきら)めず、人生を切り開いた2人の姿に勇気づけられました。(高3見崎麻梨菜)

(2017年6月26日朝刊掲載)

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