[ジュニアライターこの一作] 「天災から日本史を読みなおす」(磯田道史著)
17年6月13日
先人の言葉大切に
私がこの本を読んで感じたのは、自分を含め今を生きる人の多くが、先人の言葉をむげにしているのではないか、という反省です。ジュニアライターとして最後の記事になる今回、東日本大震災の被災地を2回取材させてもらった経験から、この本を紹介(しょうかい)したいと思います。
東北で聞かせてもらった多くの「教訓にしてほしい」という言葉は、東日本大震災に限った話ではないでしょう。「3・11」の記憶を残す取り組みは数多く始まっていますが、これは今を生きる私たちの役目だと思います。
一方、先人が過去の災害について残した記録に、私たちは目を向けているでしょうか。現代に発生した災害を未来に伝えていくと同時に、現在まで残された文献(ぶんけん)や言い伝えから、天災にまつわる「記憶」を掘(ほ)り起こす必要があるのではないでしょうか。
筆者は江戸時代の宝永地震に関する武士の日記などをひもとき、将来予想される南海トラフ地震の規模を推(お)し量(はか)るなど、客観的に向き合っています。天下の行方を変えたであろう16世紀の二つの地震や、2014年の広島土砂災害などについても多くの事実を記してます。
3・11から6年たち、災害の脅威(きょうい)を見つめ直すためにも読んでもらいたい一冊です。(高3正出七瀬)
(2017年6月13日朝刊掲載)