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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「絵日記 少女の日米開戦」(西川久子著)

戦争に熱狂 恐ろしい

 太平洋戦争が始まった1941年12月8日から翌年3月まで、京都に住む国民学校(現在の小学校)3年だった著者が描(えが)いた絵日記です。現在の著者が、当時を振(ふ)り返りながら解説を加えています。

 戦争に突入(とつにゅう)し始めた頃の内容を読んで意外に思いました。「うさぎのおにくで、すきやきをしてもらいました」(41年12月21日)、「朝はおぜんざいをよばれました」(42年1月2日)。「豊かでない」と思い込んでいた生活は、まだ苦しくなかったことが読み取れました。この数年後、困窮(こんきゅう)することを誰が想像できたでしょうか。

 戦争が色濃(こ)く表れている場面も多くあります。著者は「壮烈(そうれつ)、加納部隊長」という本を百貨店で買ってもらったり(41年12月25日)、旧日本軍がシンガポールを占領(せんりょう)した直後の朝会で「バンザーイ お目出たう」と喜んだり(42年2月16日)しています。当時の少女も戦争に熱狂(ねっきょう)していた様子が伝わります。

 戦争をすることは正しい―。教育はそう子どもに信じ込ませ、結果的に多くの命が亡くなりました。教育は時に恐(おそ)ろしいものです。しかし、そんな時代に生きた人たちが戦争のまやかしや苦しさ、悲しさを伝えてくれるからこそ、今の私たちが平和に生活できているのだと痛感しました。(中3平田佳子)

(2017年1月30日朝刊掲載)

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