[ジュニアライターこの一作] 「オットー 戦火をくぐったテディベア」(トミー・ウンゲラー作、鏡哲生訳)
18年12月17日
戦争と差別 見つめる
テディベア「オットー」の目線で、第2次世界大戦中のドイツのユダヤ人差別や空襲(くうしゅう)などを振(ふ)り返(かえ)る物語です。オットーはユダヤ人の少年デビッドが、両親から贈(おく)られた誕生日プレゼント。デビッドの親友のオスカーと遊んだり、いたずらをしたり、どんなときも一緒(いっしょ)でした。
しかし、ある日デビッドは「ユダヤ人」と書かれた黄色い星を身に着けることになりました。私は、「ぼくからすれば、人はだれもが同じ『人間』なんですけどね…」というオットーの言葉が心に残っています。同じ人間なのに、民族の違(ちが)いなどを理由に差別し、人殺しをすることは、あってはならないことです。普通(ふつう)に考えればおかしいと感じることを、なぜ、犯してしまう人がいるのでしょうか。
また、物語が進むにつれて、どこか悲しそうになってゆくオットーの姿も印象的です。よくわからない理由で、ずっと一緒にいた親友と引き離(はな)されることがあれば、私も同じようにすごく悲しむと思います。
デビッドの両親は強制収容所で殺され、オスカーの両親も戦争で亡くなります。戦争は、子どもや一般(いっぱん)市民が犠牲(ぎせい)になります。私は、人間ではなく、ぬいぐるみの目線を通して淡々(たんたん)と戦争と差別を見つめたこの本を読み、戦争の愚(おろ)かさをあらためて感じました。(中2林田愛由)
(2018年12月17日町掲載)