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ジュニアライター発信

[ジュニアライターこの一作] 「絵本 ひめゆり」(文・ひめゆり平和祈念資料館、絵・三田圭介)

少女動員 悲惨な歴史

 戦時中の沖縄(おきなわ)で負傷兵の看護のために動員され「ひめゆり学徒」と呼ばれた沖縄師範(しはん)学校女子部と県立第一高等女学校の生徒たちを紹介(しょうかい)する本です。沖縄は日本で唯一地上戦が行われ、兵士だけでなく多くの一般(いっぱん)人も巻き込まれました。

 絵本の冒頭(ぼうとう)では、少女たちが戦前、私たちと同じように夢や希望に満ちた青春の日々を過ごしていたことが描(えが)かれています。しかし読み進めると、動員後の様子が描写され、薄暗(うすぐら)い壕(ごう)の中で作業する生徒たちの目は、先の見えない不安や、戦場にいる恐怖(きょうふ)におびえているように見えます。

 特に印象的だったのは、爆弾(ばくだん)が当たり大けがをした友達を置いて逃(に)げる場面です。一緒(いっしょ)に苦しい作業を乗り越(こ)えた大切な仲間を、自分が生きるために見捨てるのです。これほど、悲しい別れはないと思います。

 私は昨秋、修学旅行で沖縄南部の糸数壕に入りました。中はとても暗く足元はデコボコだらけ。懐中電灯を照らして歩くのが精いっぱいでした。想像以上に過酷(かこく)な環境(かんきょう)で驚(おどろ)きました。

 戦争は必ず一般人が犠牲(ぎせい)になります。「人が人を殺すこと」ほど怖い事はありません。ひめゆり学徒のような悲惨(ひさん)な歴史を繰(く)り返さないためにも、核兵器廃絶だけでなく「武器で人を殺す」という考え自体を拭(ぬぐ)い去るべきだと思います。(高2鬼頭里歩)

(2018年8月14日朝刊掲載)

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