×

ジュニアライター発信

[ジュニアライターがゆく] 8・6ヒロシマ 会った感じた

 米国が広島に原爆を落として74年の6日、多くの人が平和記念式典に参列し、核兵器(かくへいき)のない平和な世界の実現を願いました。中国新聞ジュニアライターは、広島市中区の平和記念公園で県外や海外の人たちを取材しました。どんな思いでこの日のヒロシマを訪(おとず)れ、何を感じたのか聞きました。

紙面イメージはこちら

地方紙記者に同行 「実情学ぶ意欲伝わった」

 全国の地方紙記者を広島市が招いた国内ジャーナリスト研修「ヒロシマ講座(こうざ)」に神戸新聞の石川翠さん(31)が参加していました。7月28日から11日間、被爆体験を聞いたり、被爆体験継承(けいしょう)の取り組みを学んだりする講座です。私たちは石川さんの取材に同行しました。

 兵庫県の遺族(いぞく)代表として平和記念式典に参列した芦屋市の山村整司さん(77)と会い、雨の中で原爆慰霊碑(げんばくいれいひ)に参列する写真を撮(と)っていました。山村さんは2年前にがんが見つかり手術しました。石川さんが核兵器廃絶(はいぜつ)への思いを聞くと、山村さんは「亡くなった方の思いを忘れず、諦(あきら)めないことが大事」。その言葉を記事にしました。

 ヒロシマ講座を通して石川さんは、平和記念公園がもとは多くの人が住んで栄えていた場所だったと知りました。その上を歩くと、きれいな公園が本当は人間の生活の場だったという実感が湧(わ)いて、失われたものの大きさに思いを巡(めぐ)らせることができたそうです。

 今後の目標について「平和活動や世界の核兵器の現状などを身近に感じてもらえる記事を書きたい。阪神・淡路大震災に関する報道との共通点も見つけたい」と意欲(いよく)を見せていました。

  --------------------

外国人観光客8人の声紹介

 ジュニアライターは、平和記念式典に参列するなどした外国人観光客の声を集めました。広島を訪れた理由や印象、そして世界平和のために自分には何ができるのか―。8人の声を紹介(しょうかい)します。

歴史学び理解が大切 怒りより平和 争いより対話

式典 感情かき立てられた 原爆の残酷さを実感

フランシー・カウリさん(24)=フランス
 日本文化を勉強したので、8月6日は大切な日だと思ってきた。原爆資料館を見学して、原爆被害の歴史を学び、理解することが大切だと感じた。全ての国で平和記念式典のような催(もよお)しが必要だと思う。

ガリ・ジェルマインさん(32)=スペイン
 広島での経験を記録するために、原爆ドームの絵をスケッチブックに描(か)いた。怒(いか)りではなく平和、争いではなく対話を広めよう。そうすれば、核兵器による被害が二度と起こらないと確信している。

パク・サンギュさん(47)=韓国
 「原爆の子の像」の前に立つと、何も悪いことをしていない子どもたちの命が原爆で奪(うば)われたことが、とても悲しく感じられた。悲惨(ひさん)な戦争を繰(く)り返さないためには、お互いがいつも優しい心を持っていたい。

ローラン・ベイリーさん(28)=英国
 広島で起こったことは二度と起きてほしくないと、とても感情的になった。平和を実現するためには、親切になること、相手を攻撃(こうげき)しないで話すこと、他人を尊敬(そんけい)することが大切だ。

フェリサ・タンさん(66)=フィリピン
 広島の原爆については、いろいろ聞いていた。復興した街の様子や、前を向いて進む人たちを見て、うれしくなった。子どもたちには、人種を超(こ)えてお互いを愛することを教えたい。

バレンティーナ・ファバッタさん(50)=イタリア
 原爆の日の広島にいたかった。平和記念式典に出席しながら、圧倒(あっとう)され、感情がかき立てられた。被爆者から聞いた「広島を訪れた皆が、原爆被害の目撃者(もくげきしゃ)なのです」という言葉が心に残っている。

マリック・メンディスさん(55)=スリランカ
 原爆の日に合わせて広島に来たい、という長年の願いをついにかなえた。世界平和を実現するため、核兵器は決して使われてはならない。社会の中で他の者を排除(はいじょ)しないことが、平和をつくる。

ニキータ・ペトラチコフさん(36)=ロシア
 平和記念式典に初めて参加し、原爆投下が決して繰り返してはならない残酷(ざんこく)な出来事だったと実感した。平和な世界をつくるため、私自身が毎日を正しく生き、他人にその姿を示していきたい。

ナイカ・カドゥさん(15)=フランス  女性
 原爆で亡くなった人を慰霊するために訪れた。苦しんできた被爆者のことを思うと悲しくなった。原爆の投下は人類の悲劇だ。核兵器を捨てるために、私たちは世界中の人たちと協力して、政府や軍隊を説得しなければいけない。

ベン・ハムワードさん(30)=英国  男性
 平和記念公園内を歩いていると、74年前に起こったことが想像されて、とても悲しく厳粛な気持ちになった。1945年の惨劇についてさらに学び、これから会う人たちに広島での経験を共有したい。

ホセ・レマーチャさん(40)=スペイン 男性
 原爆投下は忘れてはならない出来事だ。「忘れない」という決意を強くしている。私たちは誰もが、悲しみや痛みの感情を持っている。それでも戦争が起こってしまうのはなぜなのか、広島で考えている。

クロディーン・ブリテゲンさん(36)=オランダ 女性
 世界の中でも重要な歴史的な場に来たいと思った。式典に参列し、複雑な気持ちに駆られた。悲惨を経て、広島は今、活気ある都市であり続けていることに思いをはせた。

エットレ・トロンベッタさん(16)=イタリア 男性
 平和記念公園を歩き、原爆犠牲者のことを思った。同時に、この場所自体が持つメッセージが分かった気がした。帰国したら、ここで学んだことを周りに語っていきたい。

ロベルト・トロンベッタさん(51)=イタリア
 人間が生き延びるには、平和であるしかない。平和記念公園を訪れ、そう感じた。自分にできることは今日自分が聞き、見たことを語ることだと思う。

  --------------------
「語り継ぐ大切さ知った」 石巻の生徒のとうろう流し取材

 広島市中区の原爆ドーム前を流れる元安川で、6日の夕方にあったとうろう流し。遺族や観光客が川を彩るとうろうを見守りました。宮城県石巻市の平和学習の事業で広島を訪れた中学3年生9人も、その中にいました。

 武山慎さん(15)はとうろうに「核がなくなってもっと平和な世の中に」と書きました。原爆資料館(中区)で初めて犠牲者(ぎせいしゃ)の遺品(いひん)や写真を見たそうです。「実物の力はすごい。核兵器の恐(おそ)ろしさを家族や友だちに伝えたい」と話しました。

 2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を受けた故郷(こきょう)に思いを重ねたメンバーもいました。桜井蘭奈(らな)さん(14)は、母親とともに津波にのみ込まれそうになったそうです。見慣れた街並みは瞬(またた)く間に変わり果ててしまいました。

 震災から8年がたち、復興が進む中で、桜井さんは「みんなの記憶(きおく)が風化しているように感じる。広島の人たちから、語り継ぐことの大切さを教わった」と言いました。広島での経験を学校の文化祭で発表するそうです。

 この取材は、高3藤井志穂、高2伊藤淳仁、及川陽香、川岸言織、佐藤茜、目黒美貴、庄野愛梨、フィリックス・ウォルシュ、高1風呂橋由里、森本柚衣、柚木優里奈、中3岡島由奈、桂一葉、林田愛由、中2中島優野、中1田口詩乃、俵千尋、山瀬ちひろが担当しました。

(2019年8月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ