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ジュニアライター発信

[ジュニアライターがゆく] オンライン取材

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響(えいきょう)で、原爆資料館(広島市中区)が臨時休館(りんじきゅうかん)したり、被爆者の証言会が中止になったりしています。そんな中、若者がインターネットのテレビ会議システムを活用した取り組みを始めています。中国新聞ジュニアライターも、オンラインで若者や被爆者、平和活動をする人を積極的に取材しています。今できる方法で、ヒロシマからの平和発信を続けます。

テレビ電話で被爆証言会 会って体験聞きたいと思うきっかけに

全国の若者参加

 被爆者の証言をテレビ電話で聞く「オンライン被爆証言会」を取材しました。核兵器禁止条約(かくへいききんしじょうやく)の発効(はっこう)を目指す「ヒバクシャ国際署名」事務局(東京)が初めて企画し、広島や長崎、兵庫などの小学生から大学生まで約50人が参加しました。

 事務局の林田光弘さん(28)が進行役を務(つと)め、東京在住で胎内被爆者(たいないひばくしゃ)の浜住治郎さん(74)が証言しました。浜住さんは、母親が妊娠3カ月の時、爆心地から4キロの広島市内の自宅で被爆。父親は出勤後に行方不明のままです。遺骨は見つからず、ベルトのバックルなど三つの遺品が手元に残りました。

 浜住さんは「子どもたちの『危険な核兵器を世界からなくしたい』という言葉が私の原動力です」と話していました。他の参加者からも質問が相次ぎ、約1時間半があっという間に終わりました。パソコンの画面を通じても浜住さんの表情(ひょうじょう)は伝わってきました。

 林田さんは「形にこだわらず、被爆者の声を発信し続けることが大切」と言います。今後も開催を続けるそうです。インターネットの環境があればどこからでも参加できます。核兵器の問題に関心を持ち、次は実際に被爆者と会って体験を聞きたい、と思うきっかけになってほしいです。(高1桂一葉、中2山瀬ちひろ)

核兵器廃絶へ真剣議論 被爆75年ユースラボ

崇徳高3年高垣さん企画

 崇徳高3年の高垣慶太さん(17)が、被爆者や平和活動をしている人たちを招いて意見交換するオンライン交流会「被爆75年ユースラボ」を始めました。第1回は高校生を中心に約20人が参加しました。

 ゲストは広島市内の会社員田中美穂さん(25)。広島選出(せんしゅつ)の国会議員に直接会って核兵器問題に対する考えを聞く「核政策(かくせいさく)を知りたい広島若者有権者の会(カクワカ広島)」で活動しています。

 福岡県出身の田中さんは、広島で働き始めるまで被爆証言を聞いたことがなかったそうです。被爆者たちとの出会いで「私も行動したい」との思いを持ち、カクワカ広島の活動を始めたといいます。「仕事との両立は大変でも、同じ志を持つ仲間と楽しみながら活動しているから頑張ることができる」と話しました。

 参加者が、感想や平和活動について語り合う時間もありました。核兵器廃絶について真剣(しんけん)に考え、行動している同世代がたくさんいることを実感しました。

 高垣さんは、新聞部で被爆建物などを取材した経験から「ヒロシマを考える機会をなくしてはいけない」と思い交流会を企画したそうです。次回の開催は5日で、詳細はツイッターで確認できます。10代の平和や核問題に対する考えが分かると思うので、多くの若者に参加してもらいたいです。(高3庄野愛梨)

ノーベル賞の医師「コンゴに支援を」

 日本から離れたアフリカでも新型コロナウイルスの感染が進んでいます。ノーベル平和賞を受賞したコンゴ(旧ザイール)の産婦人科医デニ・ムクウェゲさんから、昨年10月の来日時に取材した縁で、支援を求める声が届きました。

 ムクウェゲさんの活動を長年支えているNPO法人RITA-Congo(埼玉)共同代表の米川正子さん(52)に、テレビ電話で現地の様子を聞きました。ムクウェゲさんが勤めるパンジ病院では人工呼吸器が足りていないそうです。

 コンゴは長年の紛争を経験し、女性が性暴力被害を受けています。さらに、新型コロナが人々を苦しめ始めています。感染防止のため国境が封鎖(ふうさ)され「難民として国外に出た医師が戻れずにいる」そうです。医療体制や衛生環境が整っておらず、欧米(おうべい)より感染の影響は大きいとみられています。ムクウェゲさんは地域住民に習慣(しゅうかん)のないマスクの着用を働き掛(か)けています。

 医療物資を届けるため、米川さんたちはNPO法人のホームページなどで寄付を募(つの)っています。支え合い、新たな困難に立ち向かう時です。(高3斉藤幸歩)

(2020年5月4日朝刊掲載)

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