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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 核禁条約できるまで 知る絵本 自分の問題と捉え行動しよう

 核兵器禁止条約を題材にした絵本「核兵器をなくすと世界が決めた日」=写真=が出版されました。この条約は核兵器の保有はもちろん製造や使用、威嚇(いかく)もしないと約束する国際的な取り決めです。原爆や核実験、ウラン採掘(さいくつ)などの被害に苦しむ人々のことを知った主人公たちが、核兵器を禁止するため行動する様子が描かれています。

 作者のノンフィクションライター高橋真樹(まさき)さん(49)=埼玉県川越市=と原爆の図丸木美術館国際コーディネーター岩﨑由美子さん(44)=同=をオンラインで取材しました。昨年1月に条約が発効し、「幅広い世代に条約の意義を伝えたい」と絵本制作を考えました。そこへロシアがウクライナに侵攻(しんこう)。核戦争が現実の問題となり「条約がより重要になる」と思ったそうです。

 世界の核被害者と廃絶(はいぜつ)を望む市民が手をつなぎ、実現不可能といわれていた条約を実現させた過程を日本語と英語で紹介しています。希望を込めて、絵はコロンビア在住のイラストレーターTOTOさんが明るく描きました。「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員が解説を書いています。

 主人公には名前がありません。「自分に置き換えて考え、想像してほしい」からです。自分の問題だと捉(とら)え、小さくても声を上げ続けることが私たちの役目だと思いました。大月書店刊。40ページ、1760円。(中3中野愛実)

 取材を通して、自ら行動する人たちの思いの強さを感じました。作者の高橋さんと岩﨑さんは、核を巡る世界の現状についてものすごく考えておられ、核問題や平和への姿勢がはっきりとしていました。お二人のように絵本で世界中に幅広く発信することは、大変なこともたくさんあるとは思いますが、とても大切なことだと思いました。

 今すぐには行動できなくても、家族や友達に絵本を勧めてみるなどから始めたいです。この絵本が一人でも多くの人の目にとまり、興味を持って行動していく人が増えたらいいなと思いました。(高1山瀬ちひろ)

 今回の取材で、地道な活動を続けていくことの大切さを感じました。「核兵器廃絶の運動」と聞くと、私たちにとって身近ではなく、とても難しいことのように思えます。しかし今世界で起きている問題について知ることが、世界を動かす運動に繋がっていくと思いました。

 今回取材した高橋さんと岩﨑さんは、絵本という身近なツールを使って、多くの人に核の恐ろしさや核兵器禁止条約の意義について伝えていました。

 私が特に印象に残ったのは、二人が「絵本を読んで、希望を持ってほしい」と話していたことです。私が今まで読んできた原爆や戦争に関する絵本は、リアルな絵で恐ろしさを伝える内容が多かったように思います。 しかし、二人から絵本を制作した際の苦労や工夫した点などを聞き、少しずつでも次の世代につなげていくことの大切さを知りました。

 また、核の被害は終わった「過去」の問題ではなく、「今」起こっている自分に関係のある問題として考える必要性を感じました。核兵器禁止条約の制定過程を描いたこの絵本を読んで、最初は小さな活動も、みんなで広げれば大きな力になることが分かりました。

 声を上げ続けていくことが、私たち若い世代の役目だと思いました。(中3中野愛実)

 私は、高橋さんと岩崎さんがなぜ核兵器についての絵本を作ろうと思ったのかをお聞きしました。高橋さんは東京都出身で戦争について学ぶ機会が少なく、過去のことと自分の問題になっていなかったそうですが、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で被害を受けた子どもたちを支援するボランティアに参加した際、白血病や癌などで亡くなる子どもたちを見て、日本の原爆による被害と同じだと身近に感じたそうです。

 また、岩崎さんは高校生の時にアメリカに留学した際、アメリカでは広島・長崎への原爆投下を「仕方なかった」と考える人が多く、とても驚いたそうです。それで、戦争や核の被害について伝えようと活動をはじめ、いまも続く核兵器の問題を絵本にしたいと思ったそうです。

 高橋さんと岩崎さんは制作にあたって、若い世代が核兵器や戦争をただ「怖い」と感じて避けてしまわないよう、絵を明るい色にしたりして工夫したそうです。

 私は絵本を小学生の妹二人と読んだのですが、この絵本は核兵器について全く知らなくても理解でき、家族で話し合うきっかけになりました。たくさんの人に読んでもらい、核兵器をなぜなくす必要があるのか知ってもらいたいです。(中1佐藤那帆)

(2022年11月15日朝刊掲載)

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