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ジュニアライター発信

『ジュニアライター発』 サーローさんの絵本 被爆体験 子どもに伝える

 カナダ在住の被爆者サーロー節子さん(90)が主人公の絵本が、汐文(ちょうぶん)社(東京)から出版されました。核兵器廃絶(かくへいきはいぜつ)国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))を代表して2017年のノーベル平和賞授賞式で語ったスピーチを題材にしています。

 題名は「光にむかって」。13歳(さい)の時に爆心地から約1・8キロで被爆したサーローさんの体験に基づいて書かれています。建物の下敷(じ)きになりながら、暗闇(くらやみ)から聞こえた「光が見えるだろう? そこに向かって、はって行くんだ」という声で逃(に)げ出したことなどを伝えながら「核兵器禁止条約に賛成してください」と訴(うった)えています。

 絵本を企画(きかく)したフリー編集者くさばよしみさん(64)と、汐文社で編集を担当(たんとう)した堀江悠子(ほりえゆうこ)さん(41)をオンラインで取材しました。

 サーローさんの力強い英語のスピーチをやさしい日本語にして次世代を担(にな)う子どもにも伝えたいと、くさばさんが思ったのが制作のきっかけです。しかし「声を上げないでいるのは、共犯者になったのと同じなのです」の部分は、「共犯者」という難(むずか)しい言葉のままです。その方が心に残り、考えてくれると思ったそうです。「原爆を歴史としてでなく自分ごととして捉(とら)えて行動してほしい」と話します。

 核兵器禁止条約の第1回締約(ていやく)国会議がもうすぐウィーンで開かれます。堀江さんは「核使用の危険(きけん)が高まっている今こそ、改めて関心を持ちましょう」と呼び掛けていました。

 絵からサーローさんの被爆体験を想像でき、核兵器は「絶対悪」という思いも伝わってきます。絵本は40ページ、1870円です。(中3相馬吏子(そうまりこ))

(2022年6月14日朝刊掲載)

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