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ジュニアライター発信

[ジュニアライターがゆく] 広島サミットまで1ヵ月 G7大使を取材 <上>

 先進7カ国首脳会議(しゅのうかいぎ)(G7サミット)が広島市で始まる5月19日まで、あすであと1カ月です。ジュニアライターは、各国の首脳がどのような考えを持って広島に集うのかを知るため、日本でのG7各国の代表を務(つと)める駐日(ちゅうにち)大使たちに手紙を書いて、取材を申(もう)し込(こ)みました。まずはフランスの駐日大使とカナダの首席公使(しゅせきこうし)が東京の大使館でインタビューに応(おう)じてくれました。サミットを前に、各国の核兵器と平和に対する考え方や平和教育などについて質問しました。

フランス駐日大使 フィリップ・セトン

原爆の惨禍 訪問時に痛感

「核兵器持ち続けねば」とも

 フランスのフィリップ・セトン駐日大使を大使公邸(こうてい)で取材しました。

 2020年10月に就任し、昨年は8月6日の平和記念式典に参列。原爆資料館を見学しました。「原爆犠牲者(ぎせいしゃ)の血痕(けっこん)が残る衣服や、幼い男の子の遺品(いひん)の三輪車が展示されていたことをはっきりと覚えている」そうです。広島訪問で「原爆投下が何をもたらしたのかを肌で感じることができた」と話しました。長崎にも行き、被爆者の証言を聞いたそうです。

 G7参加国の中でフランスは米国に次ぐ290発の核兵器を保有しています。私たちは「何を脅威(きょうい)に感じて核兵器を手放さないのか」と質問しました。セトン大使は「核兵器による抑止力(よくしりょく)は1960年代からフランスの防衛(ぼうえい)の一つの柱(はしら)」と答えました。

 爆発を伴(ともな)う核実験を禁止する包括的(ほうかつてき)核実験禁止条約(CTBT)や核拡散防止(かくかくさんぼうし)条約(NPT)には批准(ひじゅん)しており、核兵器の軍縮(ぐんしゅく)や世界に拡散させないための貢献(こうけん)はしていると強調しました。同時に「核兵器で自国の力を示そうとする国がある限り、フランスは核兵器を持ち続けなければいけない」と断言していました。

 核兵器を完全に手放すことはできないという考えを聞いて、広島から核兵器廃絶を目指している私たちは残念な気持ちになりました。しかし、諦(あきら)めるのではなく「対話」を通して歩み寄っていくしかないと思いました。

 ロシアがウクライナへ軍事侵攻(ぐんじしんこう)し、プーチン大統領は核攻撃(かくこうげき)の可能性も口にしています。セトン大使は「サミットで広島から強い平和のメッセージを発信しなければいけない」と話しました。そこで「首脳たちに被爆者と会って体験を聞いてもらいたい」と伝えると「(証言を聞くことで)核兵器を攻撃で使用することがいかに危険であるか知ることができるだろう」と前向きでした。

 セトン大使は真剣(しんけん)な表情で言葉を選びながら質問に答えていましたが、最後にジュニアライターの谷村咲蕾(さくら)さんが描いた「核兵器なき世界のため力を尽くしてください。私たちも頑張ります」というフランス語のメッセージを添えた似顔絵を渡すと笑顔で喜びました。父親はAFP通信の記者だったそうです。「ジャーナリストとして素晴らしい取材活動をしてください」と励(はげ)ましてくれました。

デボラ・ポール カナダ首席公使

安全が脅かされる今、広島開催に意義

 カナダ大使館のデボラ・ポール首席公使は、広島を3回訪(おとず)れたことがあります。うち1回は2011年に大使館の政治担当参事官として平和記念式典に参列しました。広島は原爆投下の歴史から平和の継承(けいしょう)に力を注(そそ)いでいるという印象を受けており、「世界の平和と安全が脅(おびや)かされている今、サミット開催地となることは非常(ひじょう)に意義(いぎ)がある」と話しました。

 サミットに向けて大使館は、カナダ本国から来る政府関係者の入国手続きや宿泊場所の確保など、さまざまな手配をしています。日本政府が重視している施策(せさく)が何なのかをジャスティン・トルドー首相や首相の周りの人たちに情報提供する役割(やくわり)も担(にな)っています。サミットに合わせて広島に滞在(たいざい)するかは決まっていないそうですが「尾道ラーメンやお好み焼きを食べたい」と笑顔で話していました。

 ポール公使によると、広島と長崎の原爆被害に関心を持つカナダ国民は多く、核軍縮(かくぐんしゅく)の問題に熱心に取り組む市民団体もたくさんあります。高校生は、社会や歴史の授業で第2次世界大戦や冷戦(れいせん)のことと現在の核兵器を巡(めぐ)る国際情勢(じょうせい)、安全保障について学ぶ機会があります。

 トロント在住の被爆者サーロー節子さん(91)=南区出身=も13歳の時の被爆体験を語り、核兵器を「絶対悪」と断(だん)じて廃絶を訴えています。しかし、カナダは北大西洋条約機構(NATO)に加盟して日本と同様に米国の「核の傘(かさ)」に依存(いぞん)しています。

 核兵器を巡る考えについて質問すると、カナダは原子力の平和利用と、自国で生産されるウランが核兵器の製造に悪用されないための国際的な取り組みに努めていると説明しました。またカナダが核兵器禁止条約に参加していないことについて、ポール公使は「『核兵器のない世界』という目標は共有している」と話しました。

私たちが担当しました
 高3中島優野、高2田口詩乃、高1谷村咲蕾、中3戸田光海、山代夏葵が担当しました。

 取材を通して中国新聞ジュニアライターが感じたことをヒロシマ平和メディアセンターのウェブサイトで読むことができます。

(2023年4月18日朝刊掲載)

フランス フィリップ・セトン駐日大使 一問一答

 ―2022年夏に広島を訪問されたと聞きました。広島についてどのような印象を持ちましたか。原爆資料館を見学したことはありますか。(見学したことがあれば)印象に残った展示はありますか。
 昨年の8月6日、平和記念式典に出席し、原爆資料館も見学しました。広島という地にいること、平和記念公園にたたずむこと、そして原爆資料館を視察するということ、いずれも深い感銘を受けました。それは原爆投下が何をもたらしたのかを肌で感じることができたからだと思います。

 原爆資料館を見学して、展示を見る前と後で自分の中で何かが変わったと感じました。館内に入ると、広島に原爆が投下される前の街の雰囲気を感じることができました。そして、実際に原爆が投下されたことによって何が変わったのか、その悲劇を知ることができました。

 いくつか記憶に残っている展示があります。例えば、原爆の犠牲者の衣服がそのまま残っていました。衣服というより「布切れ」と言ったほうがいいかもしれません。そこに血痕が付いていたことが思い出されます。そして、三輪車もよく覚えています。また、最後の方に展示されていたと記憶していますが、被爆者が戦後にどのような人生を歩んだかという説明がありました。被爆してすぐに亡くなることはなくても、1950年代になって白血病で亡くなった人たちがいるなどと書かれてありました。

  ―ジュニアライターは被爆者から体験を聞く活動をしています。これまでに多くの方から被爆体験を聞きました。私たちはG7サミットで大統領や首脳たちに被爆者と対面して体験を直接聞いてもらいたいと思っています。大使はどう思いますか。また、大使は被爆者から体験を聞いたことがありますか。
 被爆者から体験を聞くのはとても大事なことだと思います。昨年夏に平和記念式典に参列し、被爆者がお話されていたこと、その姿を拝見しました。広島ではなく長崎ですが、被爆者の証言を実際に聞く機会がありました。その方は幼い頃に被爆し、その体験を基に医者になって長崎の病院で働き、ガンの研究をしていると言われました。原爆投下によってそのような悲惨な出来事が起こりうるということ、脅威があるということ、そして、特に今は核兵器が攻撃に使われる可能性というのがいかに大変であるかと知ってもらうことは大切だと思います。

 ただ、今回のサミットは日本が主催であるため、被爆者から体験を聞く機会というのは、岸田文雄首相をはじめ日本の関係者がいつ盛り込んでくるか次第だと思います。

 ―世界中の若者はG7サミットを通じて、どのようなことを学ぶことができると思いますか。
 岸田文雄首相がサミットを広島で開催したいと言われ、決定した背景には、広島から平和のメッセージを発信したいという気持ちがあったからだと考えます。それは、若者だけでなく、一般の人たちに対して発信するメッセージでしょう。過去の歴史、そこから得られる教訓。そこから何を未来にむけて私たちが学ぶことができるのか、ということを考えてほしいのではないかと思います。

 私たちは多くの脅威にさらされ、今、残念ながらヨーロッパ大陸に再び戦争が戻ってきています。このリスク、危機的なことというのは、一部の地域だけでなく、国際社会がさらされているのです。それらすべてに関して若者には考えてほしいと思っているのではないでしょうか。

 そもそもサミットには非常に特質すべき点があります。サミットで話し合われるものというのは、けっしてG7だけに関係するものだけでなく、世界に関わる問題についても意見交換され、方向性が打ち出されたりするということ忘れてはいけません。世界がどのような脅威にさらされているのか、また核拡散がどういったものにつながるのか。気候変動や環境問題についても、一般の人たちに考える機会を与えるでしょう。

 G7の参加国というのは、世界で最も豊かな国と捉えられています。そうした国々がサミットでは真摯な気持ちで議題に向き合い、必要な方向性を打ち出すことができます。そして、自分の国を超えてしっかり推進することができ、そういったことを世界に示す機会になるのです。今回、日本の議題の一つとして、グローバルサウス(発展途上国)との関係をより一層深めていきたいということがありますが、フランスも支持しています。

  ―広島では私たちジュニアライターのような若者が世界にサミットをきっかけに平和を発信していこうという動きがありますが、サミットの関係でフランスの若者が活動していることはありますか。
 フランスで前回サミットが行われたのは、2011年のドーヴィルでした。その時のことを振り返ると、たしかに若者がその機会に何かを発信しようという気持ちや取り組みはあったと思います。しかし、ジュニアライターの皆さんのように世界へ平和をアピールするために発信しようというような崇高なものではなかったと思います。

 ―世界各国の若者に、行動してほしいとか、世界に発信してほしいということはありますか。
 それぞれの国の置かれた立場によって違うかもしれませんが、例えば、フランスでは気候変動や生物多様性に対して、若者の間で、自分たちで何かやっていきたいという動きがあります。

  ―フランスは核保有国ですが、何に脅威を感じて核兵器を手放さないのでしょうか。
 核兵器による抑止力は1960年代ごろからのフランスの防衛の一つの柱になっています。抑止力として核兵器を保有するからといって、それを増やしていこうという気持ちは毛頭ありません。すべての核実験を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)と、核拡散防止条約(NTP)にも批准しています。核兵器に使われる可能性のある物質の製造も一切しないと明確に約束しています。必要最低限のものを持つことによって現状を維持していこうという思いがあります。そうしたことから、私たちは明確に軍縮のための努力をしているということが言えると考えます。NPTの3本柱である、不拡散に協力する、軍縮に努める、核の使用については原子力エネルギーのみに限定する、というのをしっかり守っていかなくてはいけないと思っています。

 軍縮はもちろん進めていかなくてはならず、大きな目標であると思っています。究極的に行き着くところというのは、国際社会の安定と安全をもたらすものでないといけません。それが補償されないかぎりフランスは抑止力としての、防衛のための核兵器は持ち続けます。それはけっして攻撃に使うわけではなく、何かの攻撃がある可能性を避けるために核兵器を保有しているという考えです。

 一方的に軍縮をこのまま進めていったとしても、必ずしもそれに従わない国があります。それは日本から遠くない ところでも起こっています。一方的に軍縮の努力をしても、核兵器を使って自分達の力を示そうとする国がいる限り、私たちは核兵器を持ち続けないといけないと考えています。私たちは日本と足並みを揃えながら、これからも軍縮に向けて努力をしていかなくてはいけません。

 フランスは日本とともにウクライナへ軍事侵攻したロシアに対して積極的な働き掛けをしています。ロシアは核兵器を攻撃で使用する可能性をちらつかせています。それがいかに危険なことであり、無責任であるか。だからこそサミットで広島から強い平和のメッセージを発信していかなくてはいけません

【フランス フィリップ・セトン駐日大使へのインタビュー感想】

 フィリップ・セトン大使は取材の前後、笑顔で接してくれました。けれど、私たちの質問に答える時は真剣な表情で、戦争やサミットについてとても深く丁寧に考えているのだということが伝わってきました。

 原爆資料館を見学したときのことや、長崎で被爆者の体験を聞いた時のことを私たちに話してくれました。大使は「被爆者の衣服や三輪車、佐々木禎子さんなどについて印象に残っている」と話しましたが、日本人でも知らない人が多い中で、大使がこれらのことをよく覚えていることに驚きました。「原爆投下が何をもたらしたのかを知り、広島を訪れた前と後で自分の中の何かが変わった」と言われ、G7サミットで首脳たちに原爆資料館を訪れ、被爆体験を聞いてもらうことで、大使と同じような経験をしてもらいたいと強く思いました。

 大使は世界中の若者に「それぞれの国の立場で活動することでこれからの世界を作っていってほしい」と呼びかけました。私は今までのジュニアライターの活動の中で多くの方に影響を与えてもらい、私自身の原爆や平和への考えをより深めることができました。今度は私が学んだことを発信することで、他の人に影響を与え、より良い世界を作ることに関わっていきたいと思いました。

 私は学業のため今回の取材でジュニアライターの活動を一度お休みします。大学に進学すると今より他の国の人と関わりを持てる機会が増えると思います。その時に世界の人と一緒に平和について考えられるように、ヒロシマや原爆のことはもちろん他の国の文化や考え方も学んでいきたいです。(高3中島優野)

 短い時間で、大使は私たちの質問一つ一つに丁寧に答えてくださいました。真剣な表情で言葉を選びながら話す姿が印象的でした。

 原爆資料館を見学された時のお話を聞くと、入ってすぐの雰囲気や、亡くなった方の衣服、三輪車など多くのことを詳細に覚えておられ、それだけで心に残り、大きな影響を与える経験となったことが伝わってきました。また、原爆資料館の見学を通して、大使の心の奥深いところを動かし、変えたことを知り、実際に広島を訪れ、被爆の実相を目の当たりにしてもらうことの重要性を感じました。

 しかし、それでも核兵器を完全に手放すことはできないとおっしゃっていたことは印象的でした。軍縮はしても、防衛のため必要最低限を抑止力として保持し続けるという立場は揺るぎのないものでした。これを受けて、私たちはそうした考えも理解しながら、核兵器廃絶を諦めるのではなく、どうしれば核兵器のない平和な世界をつくることができるのか考えていかなくてはいけないと感じました。何が原因なのか、どうすればそれを取り除けるのか、背景を知ることが小さくても着実な一歩を重ねていくことになると思います。そのためには互いが真剣に向き合い、対話することが必要です。共通の課題に対して各国のリーダーはもちろん、私たち市民もこのサミットを機会に解決策を考えていくべきだと思いました。

 今回、大使がジュニアライターの取材を受けて、真摯に対応してくださり、私たちなりに考えて声を上げていくことは世界をよりよいものにしていく力になるのではないかと感じました。「できないかも」「どうせ意味がない」と諦めず、自分たちの描く未来の実現のためにみんなで知恵を出し、今、そしてこれからを生きる私たちの手でつかみ取っていきたいと思います。(高2田口詩乃)

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カナダ大使館 デボラ・ポール首席公使 一問一答

  ―デボラ・ポール首席公使は、JETプログラム(外国青年誘致事業)の一環で、福島に2年間滞在されたと聞いています。幼いころから、日本の文化に興味があったのでしょうか。
 JETプログラムで来日して福島県喜多方市に住むまで、日本文化についてあまり知りませんでした。喜多方市では、お寺や神社のような美しい建築物、蔵、温泉文化も学びました。喜多方ラーメンが好きで、たくさん食べました。

  ―広島市の平和記念式典に出席されたことがあると聞きました。式典の印象はいかがでしたか。原爆資料館にも行かれていれば、そこで最も印象に残った展示物を教えてください。
 東京で政治担当参事官を務めていた2011年に平和記念式典に出席し、昨年も参加しました。式典はとても厳粛で重々しく、感情的でした。平和の大切さと、広島、長崎での原爆の悲劇を思い起こすための大切な行事だと思います。

 原爆資料館で最も印象に残った展示物は、一人一人の遺品と、被爆者が描いた原爆の絵です。胸を打たれました。

 原爆資料館には、JETプログラムに参加者していた時にも訪れました。資料館の存在は来日する前から知っており、私にとって広島を訪れることは最優先事項でした。若かった当時は一人で広島に旅行し、原爆ドームや原爆資料館、平和記念公園を見学しました。

  ―先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席する予定のジャスティン・トルドー首相やカナダ政府関係者の広島訪問に先立ち、広島についてどのように紹介する予定ですか。
 トルドー首相には、広島がとても美しく、近代的で緑豊かな都市であることを伝えます。広島は原爆被害を受けた歴史があり、平和継承に力を注いでいることから、G7サミットの開催地として非常に意義があると思います。

 ちなみに、広島市とカナダのモントリオールは1998年に姉妹都市になりました。トルドー首相の選挙区はモントリールで、岸田首相の選挙区は広島市という興味深い共通点があります。

  ―広島で開かれるG7サミットで、大使館はどのような役割を果たしますか。
 大使館は、カナダ本国から来日する政府関係者のために宿泊施設や食事、入国手続き、ミーティングの設定などあらゆる事務手続きをします。また、トルドー首相たちに、カナダと日本の関係について情報提供もします。

  ―若者はG7サミットから何を学ぶことができると思いますか。
 G7サミットは最終的な会議です。しかし、サミットの準備のために多くの会議が開かれます。首脳だけでなく、他の政府関係者や国際機関、市民社会など、あらゆる人たちが色々な問題について議論します。このようなプロセスがあって、包括的かつ持続可能な解決策を誓約します。

 首脳たちの決断は世界に影響を与えます。気候変動や環境問題のほか、あらゆる人たちがデジタルにアクセスできるようにするデジタルインクルージョンなど、国境を超えた課題について話し合います。そして、若い人たちがそれを受け継ぐことになります。

 最近実施されたG7のシェルパの会議では(シェルパとは、指導者に助言する高官たちの呼び名)、シェルパが「Y7」と呼ばれる若者たちと一緒に会談しました。Y7は世界中の若者の代表として重要な問題について話し合っており、彼らの意見も参照されています。

  ―カナダ政府は核兵器禁止条約(TPNW)に対してどのような立場をとっていますか。広島の被爆者でトロント在住のサーロー節子さんは、カナダ国内だけでなく世界中で被爆体験を証言し、カナダ政府に条約を支持するよう求めています。また、首都オタワやトロントの市議会も、条約を支持するよう政府に呼びかけています。
 カナダは核兵器禁止条約(TPNW)に参加していません。この条約のいくつかの項目が、私たちが加盟する北大西洋条約機構(NATO)の考えと一致しないからです。しかし、私たちは核拡散防止条約(NPT)を強く支持しており、「核兵器のない世界」という最終目標を共有しています。

  ―カナダの人々はヒロシマや核兵器の問題に関心がありますか。
 カナダ国民のほとんどが広島と長崎の原爆投下について知っており、核軍縮に熱心に取り組む団体もたくさんあります。カナダは原子力を平和利用に限定し、自国で生産されるウランが核兵器の製造に使われないように努力しています。

  ―カナダの子どもたちは核兵器についてどのように学んでいますか。
 カナダでは高校の社会や歴史の授業で核兵器について学びます。第2次世界大戦や冷戦の歴史を学ぶ際に、核兵器の話題が取り上げられることが多いです。カナダ政府は、核戦争の恐ろしさを若い人たちに伝える教育を支援しています。「核兵器のない世界」に向けた勢いを維持するためには、軍縮教育が本当に重要だと考えています。

  ―広島を訪れたら、行ってみたい場所や食べてみたい料理はありますか。
 広島経済大学に「在広島カナダ名誉領事館」の事務所があるので行ってみたいです。また、30年ほど前に訪れたことがある縮景園に行きたいです。お好み焼きも食べたいし、尾道ラーメンも食べて、喜多方ラーメンと比べてみたいです。

【カナダ デボラ・ポール首席公使インタビュー感想】

 デボラ・ポール首席公使は、これまで参加したことがある平和記念式典について「感動し、忘れられない経験となった」と話していました。だからこそ、各国の首脳たちにも原爆資料館の訪問などを通じて、核兵器の恐ろしさだけでなく、人々がいかに悲惨な目に遭うのかといった、広島でしか感じられないことを感じてほしいと思います。

 カナダ政府は平和教育を重視しているそうです。高校で核兵器について学び、一般市民の間でも広島・長崎での原爆投下について関心が高いことを知って嬉しかったです。米国の隣国であることから、あまり平和教育が盛んではないと思っていたので、意外だと感じました。

 カナダ大使館は、カナダと日本の架け橋としてカナダ留学を促進しているので、より多くの学生が両国を行き交うような関係になると、国同士の関係も深まると思います。私自身を含めて、学生が留学などを経験することで世界について学びを深め、地球の将来を考えられるグローバルな人材を増やせると、世界の平和にも近づくと思います。(中3山代夏葵)

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