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ジュニアライター発信

[ジュニアライターがゆく] 中高生のG7サミット取材 <下>

成果と課題 私たちの意見は

 広島市で5月19~21日に開かれた先進7カ国首脳(しゅのう)会議(G7サミット)では、7カ国の首脳たちが核兵器の問題や世界を取(と)り巻(ま)く課題について話し合い、その成果を文書にまとめました。核軍縮(かくぐんしゅく)に着目した「広島ビジョン」のほか、首脳声明などが発表されました。中国新聞ジュニアライターは、昨年から積み重ねたサミットの事前取材や、みんなで考えて5月8日の紙面に載(の)せた六つの「首脳への提案」を踏(ふ)まえ、サミットを振(ふ)り返りました。出し合った意見を紹介(しょうかい)します。

①サミット開催の意義

・首脳が原爆資料館で書いた芳名録(ほうめいろく)の文章から、平和について考えたことが伝わってきた。
・資料館見学や被爆者の小倉桂子(おぐらけいこ)さんとの面会は首脳たちの心に変化をもたらしたと思う。
・首脳がそろって原爆慰霊碑(げんばくいれいひ)に献花(けんか)したのは歴史的。バイデン米大統領も核の惨禍(さんか)と向き合った。
資料館の見学内容が公表されず、原爆の悲惨さがきちんと伝わったのか不安。40分間どんな説明を首脳にしたのか、もっと発信してほしかった。
・小倉さんの話に何を感じたか、首脳自身の言葉を聞きたい。ジュニアライターの被爆者取材では1時間以上はかかる。「10分程度」の面会はまだ短いと思う。
・限られた時間での見学で満足せず、もう1度来てじっくりと見てほしい。
・国際メディアセンターでは被爆者が体験を語るプログラムがあった。海外の記者が「初めて聞いた。国に帰って伝える」と話していた。すばらしいこと。
・核兵器について少しは議論(ぎろん)され、広島の文化を首脳に伝えることができた。広島のおいしい食事も味わってもらえた。多くの観光客が広島に来て、ヒロシマを学んでほしい。
・米国が「核のボタン」を持ち込(こ)んだが、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則と矛盾(むじゅん)しないのだろうか。

②首脳らによる文書や宣言

・「広島ビジョン」は大きな成果。ロシアの核兵器使用の歯止めにもなる。
・核兵器禁止条約について書かれていなくてがっかりした。被爆者と面会したことにも触(ふ)れていない。外交問題の難(むずか)しさは分かるが、世界全体の問題として話し合うべきだ。
・広島で感じたことをしっかり反映(はんえい)してほしかった。
・廃絶(はいぜつ)を「究極の目標」でなく「必ず実現するべき目標」と書いてほしかった。
・核兵器に関する情報の「透明性(とうめいせい)」を高める重要性を強調している。これなら行動しやすいのでは。
・保有国は透明性を高めるだけで自己(じこ)満足しないで。
・若(わか)い人たちの行動が大事だと書かれていた。私(わたし)たちもジュニアライター活動を頑張(がんば)りたい。
・学校の平和教育の大切さにも触れてほしかった。世界中に平和教育が広がれば、核兵器なき世界が実現できると思う。
・中国やロシア、北朝鮮(きたちょうせん)を非難(ひなん)しながら米英仏の核保有の正当性を述べているように感じた。誤(あやま)ったメッセージを広島から発してしまったのではないか。
・被爆者の思いを感じ取ったなら、核兵器廃絶への具体的な数字や期限の目安だけでも言ってほしかった。
・廃絶へと即座(そくざ)に動き出すのは難しくても、削減(さくげん)への具体的な数値(すうち)を明記しないのは無責任(むせきにん)だと思った。
・「我々(われわれ)の安全保障政策(ほしょうせいさく)」として、防衛目的の核抑止(よくし)を肯定(こうてい)する内容に驚(おどろ)いた。「我々」に岸田文雄首相も入るのだろうか。
・環境(かんきょう)問題についても多角的な視点(してん)で宣言(せんげん)を出した点はよかった。

③ウクライナの大統領訪問

・廃虚(はいきょ)から復興した広島のようにウクライナを復興させると話したことに感動。
・いま核兵器で脅(おびや)かされている国の大統領の言葉には特別の重みを感じる。
・停戦のきっかけとなれば、サミットを広島で開いた意味があると思った。
・米国が戦闘(せんとう)機の供与(きょうよ)を確認(かくにん)し、広島が戦争に加担したように発信されたのではないか。
・戦争を続けるためでなく今すぐ止めるための話し合いをしてほしかった。

④その他

・私たちが各国の首脳の考えや課題を知る機会になった。
・首脳たちがどう行動を変えていくのかを見ていきたい。
・女性参加やジェンダー平等がうたわれたのは大切なこと。
・車列を見るだけでなく、首脳と市民が触れ合える場が欲(ほ)しかった。
・韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が岸田首相と韓国(かんこく)人原爆犠牲者(ぎせいしゃ)慰霊碑に献花した。今後の日韓(にっかん)関係も良くなってほしい。

⑤学校ではどうだった?

・サミットの話題が出なかった。サミット自体を知らない人も多くて驚いた。
・道徳の授業時間に先生と感想を話し合った。
・学校で関連記事が配られて読んだ。
・自然な会話で平和について友達と話すきっかけになった。

(2023年6月5日朝刊掲載)

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