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ジュニアライター発信

[ジュニアライターがゆく] G7サミットを知ろう 議論 私たちにも関わり

 5月に広島市で開かれる先進7カ国首脳(しゅのう)会議(G7サミット)を前に、市内では機運を盛(も)り上げるためのイベントが開かれたり、PRする看板(かんばん)が掲(かか)げられたりしています。関連ニュースを新聞やテレビで目にする機会も増えてきました。G7各国の首脳たちが議論(ぎろん)する国際会議は、私たち市民に無関係ではありません。ジュニアライターは、これまで日本であったサミットについて調べ、開催(かいさい)に向けて準備(じゅんび)を進める広島の行政担当者にサミットの果たす役割(やくわり)や私たちとの関わりについて聞きました。

広島サミット県民会議・森岡課長に聞く 平和の発信力 海外も注目

 ジュニアライターは「広島サミット県民会議」の事務局を訪(たず)ねました。広島商工会議所(広島市中区)の建物にあり、入り口にはサミットをPRするポスターや県内の観光スポットなどを伝えるチラシが並(なら)んでいます。平和・若者参画推進課の森岡庸介課長に、サミットについて質問しました。

 県民会議について教えてください

 県や市、地元の財界(ざいかい)、大学など、さまざまな分野の関係団体が集まった官民一体(かんみんいったい)の組織で、昨年7月に発足(ほっそく)しました。県と市町、民間の職員約70人が働いています。

 活動の柱(はしら)は五つ。開催支援▽おもてなし▽平和の発信▽広島の魅力(みりょく)の発信▽ポストサミット(サミット後)を見据(す)えた若者の参画(さんかく)―です。

 市民を含(ふく)めた「オール広島」で歓迎(かんげい)し、サミットに関わってもらうことが大切だと考えています。多くの人に私たちの取り組みを知ってもらうため、ホームページやツイッターでも情報を発信しています。

  なぜ広島で開催されることになったと思いますか

 広島は世界で初めて戦争で原爆を投下されながら、惨禍(さんか)からの復興(ふっこう)を遂(と)げたというメッセージ性があります。ウクライナに侵攻(しんこう)したロシアが核兵器を使う可能性をほのめかす中で開催地に選んだのは、広島の発信力を考えてのことだと思われます。首脳たちが平和の尊(とうと)さを体感し、力強い平和への訴(うった)えを発信することを期待(きたい)したいですね。

 首脳たちに原爆資料館の見学や被爆者の証言を聞いてもらいたいです。実現しそうでしょうか

 県民会議は昨年10月、国へ要望書を提出(ていしゅつ)しました。7カ国の首脳たちに被爆者の体験や平和への思いを共有してもらうため、原爆資料館の視察(しさつ)や被爆者との対話、平和のメッセージを発信することなどを求めています。

 サミットは若者が国際問題に関心を持ち、理解を深める機会になります。関連行事に若者が積極的に参加できるように後押ししてほしい、とも伝えました。

 広島の若者はどのように参加していますか

 ハトと折り紙をモチーフにした県民会議の公式ロゴは、基町高の生徒が制作しました。県民会議が主催するイベントのチラシなどに載せています。広島バスセンター(中区)などに掲(かか)げているカウントダウンボードは県内の高校生による手作りです。

 1月から「サミット塾」を県内の中学、高校で開いています。外務省の職員がサミットの歴史や意義(いぎ)について説明します。また、サミットを前に高校生が意見を交わす「G7広島サミットジュニア会議」が3月に市内であります。県内と、日本を除(のぞ)く6カ国出身の子どもたちが「平和」や「多文化共生」などをテーマに英語で討論(とうろん)する予定です。さまざまな企画を計画中です。

 幅(はば)広い世代が参加できる企画はありますか  「スマイル・フォー・ピース・プロジェクト」は年齢制限(ねんれいせいげん)なく、誰でも関わることができます。各国のリーダーへの歓迎(かんげい)の言葉や平和への思いを書いた紙などを掲げた人物写真を募(つの)っています。集まった写真を組み合わせてモザイクアートをつくり、関連イベントで飾ったり新聞に掲載(けいさい)したりします。家族や友人と気軽に応募(おうぼ)してほしいです。

 若者はサミットのどのようなところに注目したらいいでしょうか

 被爆地での開催は海外から注目が高く、すでにオーストリアやハンガリーなどのメディアが広島入りして平和活動に取り組む高校生たちを取材しています。サミットが開かれる時期は、大勢の国内外のメディアが、議論されたことや広島に関することを報道します。それを見ることで、私たちの理解もより深まるはずです。ぜひ注目してください。

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日本 7回目議長国

7ヵ国とEUが参加

 G7にはフランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7カ国および欧州連合(EU)が参加しています。

 順番に議長国を務(つと)め、サミットを開催します。日本が議長国となるのは今年で7回目です。任期は1~12月で、一年を通じて役割(やくわり)を担(にな)います。必要だと判断すれば、議長国が緊急(きんきゅう)の首脳会合や大臣会合を開くこともあります。

 首脳会合の議題(ぎだい)は、G7各国の「シェルパ(首脳補佐役)」が意見を調整(ちょうせい)して決まります。世界経済や地域の情勢(じょうせい)などさまざま。もともとシェルパは、ヒマラヤ登山で山頂(さんちょう)(サミット)に着けるよう案内してくれる人たちの呼び名です。

 首脳会合だけでなく各分野の大臣会合も日本で開かれます。外相会合は長野県軽井沢町、保健相会合は長崎市です。

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県立図書館に特設コーナー

18ジャンルの1000冊

 G7サミットについて調(しら)べたいと思った人は、県立図書館(広島市中区)を訪れてみてください。関連本を集めた特設コーナーが新たにできました。

 入り口からすぐ右側にコーナーはあり、2カ所の棚(たな)に計千冊が並(なら)んでいます。内容は、参加国への理解が深まる▽地球規模(きぼ)の課題を学べる▽開催地広島を世界に発信する-の大きく三つに分類(ぶんるい)されています。

 豊田義政館長と正井さゆり副館長の案内で、準備する様子を取材しました。職員たちが膨大(ぼうだい)な本をG7参加国や世界経済、ジェンダーなど18のジャンルに分けていました。どんな内容の本なのか一目で分かるようにシールを背表紙(せびょうし)に貼(は)る工夫をしています。例えば各国の歴史や文化の本は国旗(こっき)、気候変動はシロクマです。

 サミットの議題はまだ発表されていないため、過去のサミットを参考に本を選んだそうです。千冊の半数の500冊は新たに購入(こうにゅう)しました。正井副館長は「どんな本がサミットを知ることに役立つのか、考えながら選ぶのに苦労した」と話していました。

 「子どもも手に取りやすいように、絵や写真がたくさん使われた児童書や図鑑(ずかん)も並べた」と豊田館長はアピールします。コーナーは8月20日まで設置(せっち)されます。サミットを前に、世界が抱(かか)える課題を調べたいと思います。

 G7サミットでは、核保有国のフランス、米国と英国が参加します。日本を含めた他の国も、国の安全のため米国の核兵器を必要だとしています。3月に予定する次回の「ジュニアライターがゆく」では、各国の実情について調べたり取材したりします。

私たちが担当しました

 この取材は、高3桂一葉、岡島由奈、高2山広隼暉、高1田口詩乃、山瀬ちひろ、中2川本芽花、山代夏葵、中1川鍋岳、西谷真衣が担当しました。

 取材を通して中国新聞ジュニアライターが感じたことをヒロシマ平和メディアセンターのウェブサイトで読むことができます。

(2023年2月6日朝刊掲載)

【取材を終えて】

~広島県立図書館の特設コーナー~

 今回、県立図書館を取材しました。若者に興味を持ってもらうためにG7のコーナーを設け、若者でも読みやすい本をそろえていました。家の近くにある図書館でサミットについて調べられたり、関心を持ったりできる環境ができていることに驚きました。これだけ身近に触れ合えるところがあるのでどんな人でも関心が持てる環境になっているなと思いました。

 私もインターネットでサミットについて調べるだけでなく、図書館などに行って調べることで新しい発見があるのではないかなと思いました。県立図書館だけでなく区の図書館などでもこのブースを設けるそうなので調べ物をする際など活用したいです。(高3桂一葉)

 県立図書館に設置された、G7広島サミットに関する特設コーナーの取材を担当しました。若い世代にサミットに関する関心を持ってもらおうと、新しい本を約500冊も購入したというお話に驚きました。実際に並ぶ予定の本が入っている箱を見させていただくと、図柄が豊富で中高生でも読みやすそうな本が多くそろえられていました。サミット開催を機に、G7の議題に関する本はもちろん、その他の世界の諸課題に関する本も読んで知識を身に着けていきたいです。(高3岡島由奈)

 本を通してのG7サミットを知り、盛り上げる。このような試みは日本で初めてだという。今まで行われておらず、準備期間も短い中で、職員の方たちが奮闘されていた。しかし、そんな中でもとても楽しそうにされていたのが特に印象的だった。

 県立図書館だからこそできる試みで、職員の方全員が本気で取り組んでいるからだろうか。広島県の資料やちょっとマニアックな本まで、市町立の図書館ではお目にかかれないような本がたくさんある県立図書館。だからこそG7サミットの多岐にわたる議題や参加国、開催地である広島の魅力についての本を多く集めることができるのだと思った。しかし、それらを集めるのも簡単ではない。書籍の保存という役割も担っている図書館で、膨大な量の本の中から目当てのものを探し出すのは大変だ。それすらも乗り越える、職員の方たちの知識量や努力、相互の協力は本当にすごいと思った。

 私たち県民の身近にある図書館という場で、G7サミットに触れられる場ができる。そうすることで、サミットを県全体で盛り上げる。それが、サミットへの注目を集め、そこで話し合われる問題への注目や関心を上げることにもつながると思う。また、ウクライナ侵攻や核開発の問題がある今、ヒロシマでサミットを行う意義を広めていくことにもなると思う。それを支える人たちがいることを、今回知ることができたと思う。さらに、そうした人たちのように、私もジュニアライターとしてできることを探し、実行していきたいと感じた。(高1田口詩乃)

~広島サミット県民会議(平和・若者参画推進課)~

 今回取材した平和若者参画推進課は、若者に興味を持ってもらうために色々な活動をしていることがわかりました。サミット塾を開催したり、高校生にロゴの制作を依頼したり、ジュニア会議を開くなど若者がサミットに関わる機会を多く作ろうとしていました。また、広島で開催されるということで「オール広島」で首脳たちを迎え入れたいとおっしゃっていました。

 広島に住んでいる人が少しでも興味を持てるように、また少しでも関わりを持てるように自分のできることを少しでも行動していくこと大切だと思いました。私もサミットに関する記事をたくさん読んでみたり、海外はこのサミットをどのようにとらえているのか調べてみたいと思います。(高3桂一葉)

 広島サミット県民会議事務局の取材に参加をしました。森岡課長が「サミットについて国内のメディアだけではなく、国外のメディアの取り上げ方にも注目して見てみてほしい」と話したことが印象的でした。今まで海外メディアのニュースに触れたことはほとんどありませんが、翻訳機能など活用して、その国がどのような話題を積極的に取り上げているのか調べてみたいと思いました。(高3岡島由奈)

 G7サミットに若者が参加していくことを推進することの意義とは何だろうか。今回の取材を通してそんな疑問が浮かんだ。

 広島サミット県民会議事務局では、サミット後を見据えた若者のサミット参画を目指している。それは、サミットを通じて、世界の課題や広島のこと、平和についての関心を高めてほしいからだと森岡さんは語った。確かに地元でサミットという大きな出来事があるのは、今まで知らなかったことに触れる良い機会となる。しかし、そのようにして意義を与えられるだけでよいのだろうか。

 私は、若い世代がサミットに積極的にかかわる中で、それぞれの意味を見出していく必要があるように感じた。中高生である私たちは、10年後20年後とこれから日本を担っていく世代だ。これからの世界がどうなっていくのか、一番知っておかなければならないのは私たちではないだろうか。私たちが生きていく世界の在り方を話し合うサミットに無関心であってよいのだろうか。今の世界の現状を知り、思い描く未来図を持ってG7サミットに働きかけていくべきではないかと感じた。

 戦争のない世界、人々が豊かに暮らせる世界を目指して、受け身ではなく能動的にサミットにかかわっていきたいと思う。行動を起こさないと未来は変わらないのだから。(高1田口詩乃)

 サミットに向けて広島県民全体で準備していきたいという思いを感じることができました。若者がサミットに関わる機会が多く設けられており、貴重な地元開催なので積極的に参加していきたいと思います。また、今回の取材を通して伝統品、食文化、平和都市であるなど広島のたくさんの魅力を再確認できたので発信し続けていきたいです。(高1山瀬ちひろ)

 今回、森岡さんにサミットについて色々お話を聞かせていただいたことで、よりサミットが身近に感じられるようになりました。より多くの人に身近に感じてもらうために、サミット塾やジュニア会議を開催するなど県民会議がサミットと私たちをつなげる架け橋となり「オール広島」の実現を目指していることを感じました。

 私は伊勢志摩サミットの直前に観光に訪れたことがあり、サミット限定商品やお土産品など様々な盛り上がりを感じました。今回も広島が盛り上がって注目されて欲しいと思います。

 取材の最後に職場を見学させてもらうと、窓から原爆ドームを眺めることができました。そのことからも今のロシアによるウクライナ侵攻の中、ここ広島が世界に平和を発信するのに最適な場所だと実感できました。そして、今よりも多くの人の平和意識が向上することを期待したいです。(中2山代夏葵)

 G7サミットは、国が全て考えて、実行するものだと思っていましたが、それは違って、広島県民全体で、全力で作っていくものだと感じました。職員さんも広島県内各地から集結されているそうで、森岡さんが「オール広島」に積極的なのがよくわかりました。

 また、平和・若者参画推進課の方々が、国に資料館の視察や被爆者との会話など被爆の実相に触れる機会をつくる事を要望されていて、そこからもヒロシマを知って欲しいという思いが伝わってきました。

 もうひとつ自分が注目したのは、若者についてでした。この課では、業務内容の5本柱の中に若者の参画というものがあります。そのため、国に若者と首相との交流を要望しているそうです。そして、平和・若者参画推進課のロゴは高校生の方が描かれたそうで熱意が伝わってきました。他にも、大学生のおもてなしのボランティアの募集であったり、若者に関心を持ってもらうことに積極的でした。

 原子爆弾が落とされて、復興した広島で、若者と一緒にサミットを作りあげていくというのは、若者に関心を持ってもらうという点でも重要な役割を果たすと思います。G7サミットという節目で、多くの若者に平和について知ってもらえるチャンスだと思うので、自分も積極的に発信しなければいけないと思いました。(中1川鍋岳)

 今回の取材で特に印象に残ったのは、若者とG7サミットの関わりについてと、広島でサミットが行われる意味についてです。今年、広島でG7サミットが開催されるにあたって、高校生が参加することのできるG7サミットジュニア会議や、外務省の講師が学校に来て直接サミットについて生徒に教える「サミット塾」などが行われると森岡さんがおっしゃっていました。

 このように、広島の若者がサミット開催を通して、国際問題を考えることが出来る機会が沢山用意されていることに驚きました。私は、多くの若者は「G7なんて国の偉い人だけが関わるものだ」と考えているのではないかと思いますが、そうではなく、広島に住む一人の若者として、サミットに少しでも携われることはすごいと感じました。そうすることで、少しでも多くの若者が国際課題などに興味を持つことができ、より平和で明るい社会への実現につながるのではないかと思いました。

 そして、平和な社会を目指すためには、広島以外の国や地域の人にも、平和について関心を持ってもらうことが必要だと私は考えています。原爆により多くの人が傷ついたけれど復興し、平和の大切さを訴え続けるこの広島という地でG7サミットが行われることは、世界に平和の尊さを伝えられる素晴らしい機会だと思います。サミットの報道などを通して、世界中に広島や原爆のこと知ってもらうことが出来ると考えています。

 取材の際、森岡さんが何度もこのサミットで「平和を発信する」とおっしゃったのが心に残っています。このG7サミットで広島が先頭に立って、世界中に平和の輪が広がることを願っています。(中1西谷真衣)

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