『ジュニアライター発』 「明子さんのピアノとパルチコフさんのヴァイオリン」を読んで
23年11月14日
時を経て共演 心打たれる
被爆しながら今も音色を響(ひび)かせる二つの楽器があります。原爆死した女学生の河本明子さんのピアノと、白系ロシア人セルゲイ・パルチコフさんのバイオリンです。それぞれの楽器の持ち主や人模様を紹介する本「明子さんのピアノとパルチコフさんのヴァイオリン」を読みました。
1945年8月6日、19歳で広島女学院専門学校生だった河本さんは爆心地から800メートルで被爆。翌日に亡くなりました。米国製のピアノを演奏(えんそう)するのが大好きで、日記につづっていました。ピアノは現在、平和記念公園(広島市中区)の被爆建物レストハウスで展示(てんじ)されています。
バイオリンは、ロシア革命から逃(のが)れたパルチコフさんが広島で弾(ひ)いていました。戦後に家族が広島女学院(東区)に寄贈(きぞう)しました。
本を読んで、楽器に刻(きざ)まれた歴史や持ち主の思いに共感した人たちが、大切に受け継(つ)いできたことが分かりました。河本さんは幼いころ、パルチコフさんのオーケストラで活動していたそうです。時を経て二つの楽器が国内外で共演していることに心打たれました。原爆の恐(おそ)ろしさと音楽を楽しめる平和の大切さを発信し続けてほしいと思います。ガリバープロダクツ刊。(高1殿重万桜)
(2023年11月14日朝刊掲載)