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核なき世界への鍵

[核なき世界への鍵] 「禁止条約」仏で国民投票を 松山の女性  署名呼び掛け

 核兵器保有国のフランスで「核兵器禁止条約」の制定交渉参加と批准の賛否を問う国民投票の実施を目指す署名運動を、被爆国から草の根で後押しする動きが出ている。松山市の通訳阿部純子さん(71)。国内外でヒロシマの被害を伝えてきた経験から核兵器の禁止による廃絶を願い、署名のアピール文を日本語に翻訳。日本の市民に署名への協力を呼び掛けている。(水川恭輔)

 阿部さんは原爆資料館(広島市中区)で見た焼け焦げた三輪車に心を動かされ1991年から約10年、松山市から通いながら同館などの英語ガイドや、核軍縮に関する国際会議の通訳をした。愛媛大非常勤講師だった2010年に広島で、12年には米国で被爆の悲惨さを伝える横断幕を掲げ、学生とともに訴えた。

 フランスの市民団体「核軍縮のための市民行動」(ACDN)が提唱する署名運動は、禁止条約の交渉開始を定めた国連決議に反対したフランス政府を動かすため、世界の市民の力をてこに国民投票をするのが目的。提案には国会議員185人(全体の5分の1)の賛同が必要で先月11日時点で110人いるという。

 この動きを昨秋にインターネットで知った阿部さんはACDNへ「被爆国から力になれば」と協力を申し出た。「核兵器は人の命を愚弄(ぐろう)する。(禁止条約の批准に賛成か問えば)75%のフランス人が『はい』と答えるだろう」などと訴えるアピール文を和訳。国内の知人たちに電子メールで送っている。

 国連決議には日本政府も反対した。阿部さんは「世界に恥ずかしい姿を見せたからこそ日本の市民が動かないと。フランスの署名を刺激に日本でも市民から政府への働き掛けが盛り上がってほしい」。署名用紙はACDNホームページで入手できメールで参加可能。希望者には和訳をメールで送る。阿部さんTel090(1328)9387。

「核兵器禁止条約」の制定交渉
 核兵器使用の非人道性や核軍縮の停滞を訴える非保有国の主導で、昨年末の国連総会で条約交渉開始が決議された。実質審議の場だった第1委員会(軍縮)では123カ国が賛成したが、保有国の米ロ英仏など38カ国は安全保障上の懸念などを理由に反対した。会議は3月27~31日と6月15日~7月7日に米ニューヨークであり、条約の中身を詰める。

(2017年2月3日朝刊掲載)

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