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全員被爆死の移動演劇団 若手俳優が同名で結成へ 「桜隊」再び

 広島市で被爆し、9人全員が亡くなった移動演劇「桜隊」の悲劇を語り継ごうと、殉難碑のある東京都目黒区の五百羅漢寺で追悼会を営んできた「桜隊原爆忌の会」が、若手俳優による同名の劇団を再結成させる。6日、殉難碑に報告し、来年の追悼会で桜隊にささげる朗読劇の初披露を目指す。

 桜隊は新劇俳優の丸山定夫を隊長に1945年結成。元宝塚スターの園井恵子らが参加し6月から広島を拠点に山陰を巡業した。8月6日、爆心地に近い堀川町(現中区)の宿舎にいた俳優や舞台係たち9人のうち5人が即死。4人は宮島、神戸、東京に避難したが8月中に死亡した。

 戦後、演劇仲間を中心に供養が続き、75年に原爆忌の会を設立。例年8月6日に同寺で追悼会を開き、原爆劇や朗読劇でしのんだ。近野十志夫事務局長(74)=東京都江東区=は「桜隊を直接知る人が年々亡くなり高齢化で活動が難しくなった」と話す。追悼会は2018年から休止している。

 こうした中、事務局の俳優青田いずみさん(58)=兵庫県福崎町=は「若い役者に桜隊を『追体験』してもらうことで会や戦禍への理解を深めたい」と桜隊の再結成を呼び掛けた。首都圏で活動する20~40代の男女3人が名乗りを上げた。

 新生桜隊の隊長椎名友樹さん(45)=神奈川県平塚市=は「生きて演じ続けたくてもかなわなかった。そういう歴史を引き継ぐことに意義を感じる」と話し、青田さんらと朗読劇を練り上げる。初舞台を兼ね再開するはずだった今年の追悼会は新型コロナウイルスの影響で中止に。来年の追悼会で披露する予定だ。

 桜隊の悲劇は新藤兼人監督の映画「さくら隊散る」でも知られる。4月に亡くなった大林宣彦監督の遺作「海辺の映画館 キネマの玉手箱」を巡っては作中に登場する桜隊の演出に関し監督サイドから事務局に問い合わせがあった。事務局の俳優山崎勢津子さん(71)=さいたま市=は「映画界や演劇界のために会を残す価値がある。若い世代に加わってほしい」と願う。(桑原正敏)

(2020年8月6日朝刊掲載)

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