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福山の証言者 彦坂さん死去 ゆかりの人々追悼

平和願い被爆アオギリ植樹に尽力

 福山市内で被爆アオギリの植樹に精力的に取り組んだ被爆者の彦坂昭子さん(同市多治米町)が6月8日、老衰のため市内の病院で死去したことが分かった。93歳だった。ゆかりの人々から追悼する声が上がっている。

 18歳の時、爆心地から約4キロの造船工場で被爆。「思い出したくない」と胸に秘めていたが、1994年8月に平和記念公園(広島市中区)で見た被爆アオギリに心を動かされ、証言活動を始めた。

 「その頃に体調を崩したこともあり、自分の体験を伝えようと決心したのでは」と長男学さん(63)は振り返る。アオギリの種を譲り受け、自宅で育てた苗を市内外の学校や公園へ贈るなどの活動を続けた。

 福山市人権平和資料館の市川晴子さん(70)は「被爆死した弟の話になると涙ぐんでいた」と思い返す。瀕死(ひんし)の弟を虫から守ろうとたいた「蚊追粉(かおいこ)」を市へ寄贈している。市川さんは「つらいが、平和の素晴らしさを伝え続けようと改めて心に誓った」と話す。

 2006年度には市立女子短大(現市立大)保育科の学生が彦坂さんに話を聞き取り、幼児向け紙芝居を制作。指導した同大の大庭三枝准教授(55)は「保育士の卵たちに、生きた平和教育をしてもらった」と感謝する。その紙芝居が基になった読み聞かせなどの教育プログラムは昨年、国際的な賞を受賞。「託された思いを世界に届けたい」と力を込める。(吉原健太郎)

(2020年8月6日朝刊掲載)

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