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厚労相 被服支廠を視察 「県の検討踏まえ協力」

 加藤勝信厚生労働相は6日、広島市内に残る最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を視察した。国と広島県が所有する全4棟の存廃議論に注目が集まる中、「県の検討を踏まえ、できる協力はする」と表明した。

 加藤氏は湯崎英彦知事の案内で初めて視察。県の3号棟前で、爆風でゆがんだ鉄扉や、築107年で老朽化した建物の状況について説明を聞いた。1号棟前で被爆した、市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」の中西巌代表(90)=呉市=とも言葉を交わした。

 報道各社の取材に、加藤厚労相は「歴史ある、大変価値のある建物だ」と評した。ただ、県への具体的な支援策には触れず、国の1棟に関しても「全体としてどうするかという中で考えたい」と述べるにとどめた。

 全棟の保存を求めて活動している中西代表は「お願いしますと伝えた。ここで亡くなった多くの魂を背負い、全棟保存がかなうまで生き抜きたい」と話した。

 被服支廠を巡っては、安倍晋三首相もこの日、中区での記者会見で「県の議論を踏まえて国としてしっかり対応する」と言明した。県は昨年末に「2棟解体、1棟の外観保存」という安全対策の原案を公表。県民や県議会の異論を踏まえ本年度の着手は見送っている。自民党の議員連盟は県所有の3棟を約30億円かけて保存する案を打ち出している。(樋口浩二)

(2020年8月7日朝刊掲載)

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