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社説・コラム

『記者縦横』 札幌・金沢で「継承」知る

■ヒロシマ平和メディアセンター 新山京子

 広島は米軍による原爆投下から75年となった。被爆者は高齢になり、各地で被爆者団体の解散が相次ぐ。一方で、被爆2世たちによる「新たな継承」が始まっている地域がある。8月6日を前に北海道と石川県を訪ねた。

 札幌市の道庁ロビーで北海道被爆者協会が開いた原爆展。受付の女性に話しかけると、被爆2世だという。実物資料の展示の中に、女性の父親の遺品があった。熱線で溶けて変形したコーヒーカップだ。

 家族が広島から持ってきて、長年大切にしていた。父を亡くした後、協会に寄贈したのを機に活動を手伝うようになったという。3年前に結成した「被爆二世プラスの会北海道」は、老いが進む協会の人たちを市民が支え、親の被爆体験を伝える証言活動や、平和の尊さを語る絵本づくりなど活動の幅を広げている。

 石川県では、たった一人で証言活動を続ける被爆者団体の会長に、被爆者でない市民が寄り添っていた。金沢市内にある慰霊碑の名を付けた歌をつくり、子どもたちが歌い継いでいる。

 「原爆を経験していなくても、平和のためにできることはある」。札幌と金沢で聞いた言葉は、被爆3世の私の心に強く響いた。

 「あの日」の記憶の継承は難しくなっていくだろう。被爆者から直接話を聞くことができる時間は、限られている。今、私たちにできることを探して行動に移すことの大切さ。被爆地から遠く離れた二つの地で教えられた気がしている。

(2020年8月7日朝刊掲載)

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