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備後でも追悼の祈り 被爆75年 「核のない世界を」 各地で式典

 被爆75年を迎えた6日、備後地方でも追悼の式典が各地で開かれた。新型コロナウイルス対策で参加人数を減らして内容も縮小する中、犠牲者に祈りをささげ、平和を願った。

 福山市原爆被害者友の会が同市霞町の中央公園で開いた慰霊式典には、被爆者や遺族たち約80人が参列。新型コロナの感染予防のため来賓の招待をやめ、参加者に手指の消毒を呼び掛けた。この1年間で亡くなった35人を追記した1426人分の死没者名簿を慰霊碑に納め、黙とうした。

 式典に初めて参加した福山市春日町の福井隆さん(70)は、6月に95歳で亡くなった母幸子さんの名が名簿に記された。「母は被爆体験を話そうとせず、つらい思い出だったようだ。忘れないように広島や福山で式典に参加していきたい」と話した。

 市福祉総務課によると、3月時点で被爆者健康手帳を持つ市内の被爆者は891人。2010年3月の1812人から10年で半数以下に減った。

 広島市東区で被爆した池尻博さん(95)=福山市松永町=は「75年の時がたったが原爆は許せないという気持ちは少しも変わらない」と振り返る。参列している若者の姿に「核廃絶を願う思いを託せると感じ、頼もしく思った」と話した。

 尾道市東尾道の原爆死没者慰霊碑前でも、尾道地区原爆被害者の会が式典を開き、約60人が出席。槙原弘会長(88)=同市長江=は昨年11月にローマ教皇が広島、長崎を訪れ核兵器廃絶を訴えたことに触れ、「生きている限り核のない世界をつくっていきたい」とあいさつした。

 高齢化する被爆者を支えようと、同会の運営は2世が引き継ぐ。2世代表となる畑山利一さん(70)=同市久保町=は「入市被爆した父から『この世の地獄』と惨状を聞いてきたことが活動の原点。尾道から平和を発信していく」と誓った。

 三原市では、市原爆被害者之会が同市本町の慰霊碑前で式典を開き、集まった約70人が犠牲者に黙とうをささげた。死没者名簿には11人が加わり、計557人になった。

 同会監査の東谷年人さん(91)=大和町=は、救援の食料を運ぶため庄原市から入市被爆した。「大勢の遺体が焼かれていた様子が忘れられない。当時の体験談や写真を使い、啓発を続けていく」と力を込めた。

 三原市内に住む祖母と訪れた尾道市山波小5年の村上彩葉(いろは)さん(11)は「慰霊碑に集まった折り鶴の多さに驚いた。みんなで戦争をなくしていきたい」と話した。

(2020年8月7日朝刊掲載)

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