×

ニュース

式典 「密」避け様変わり 平和公園 制限強化嘆く人も

 新型コロナの感染拡大を防ぐため、広島市は平和記念式典の参列者を大幅に減らして来場自粛を呼び掛けた。さらに式典会場となる平和記念公園(中区)一帯の入場規制を早めたり、原爆慰霊碑へ向かうルートを一方通行にしたりして人の密集や密接を避けた。式の様相は例年と一変した。

 市は公園一帯の入場規制を、例年より1時間ほど早い午前5時15分に開始。式典を見ようとする人が大勢詰めかける状態を作らないよう規制区域の面積を従来の3倍に広げ、ロープなどで囲った。慰霊碑に祈りをささげる人のため、元安川右岸の1カ所だけに入り口を設け、慰霊碑前を通って北へ抜ける一方通行のルートを案内した。

 また式典は、自由席が設けられなかった。東京都の介護職員島中早苗さん(71)は「10年前に亡くなった被爆者の母を思うと、どうしても今日ここへ来たかった。式典に参列できないのは残念だが、新型コロナの影響を考えれば仕方がない」と話していた。一方、「自由に平和への祈りができなかった」と制限強化を嘆く人もいた。

 原爆投下時刻の8時15分は規制線のぎりぎりまで多くの人が並び、黙とうをささげた。警備員が間隔を空けるよう注意を促す場面もあったが、トラブルなどは報告されていない。

 会場南側の平和大通り沿いで手を合わせた東京都の東京大教授山名淳さん(57)=教育学=は「被爆の事実を伝える式典がコロナ禍でどう営まれるのか興味があった。制限はやむを得ないが、密集、密接にならないよう、式典の様子が分かるモニターなどを(会場外に)設けてほしかった」と指摘した。

 午前9時に規制が解かれると、慰霊碑前には長い列ができた。会場外で式典が終わるのを待っていた、広島市佐伯区の会社員越道隆久さん(53)は「来年は近くで式典の雰囲気を感じたい」と望んでいた。(新山創、樋口浩二、猪股修平)

(2020年8月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ