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希望の灯「白鳥」でともす 森下洋子 22日に5ヵ月ぶり公演再開

「難局に立ち向かう」

 広島市中区出身の世界的なプリマバレリーナ、森下洋子(71)率いる松山バレエ団(東京)は22日、新型コロナウイルス感染拡大で中止を余儀なくされた公演を5カ月ぶりに再開する。「困難な状況でも前を向いて進む」。厄災に包まれた世界の姿に被爆地広島を重ね、舞台に希望の灯をともすつもりだ。(桑原正敏)

 東京・渋谷の「LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)」で「新・白鳥の湖」を上演する。冒頭シーンでコロナ禍を連想させる演出を加えた。感染予防策として約2千席の会場で入場者を800人に絞り、検温や消毒を徹底する。

 新型コロナの影響で「新・白鳥の湖」の横浜公演(3月)を中止して以降も、森下は「毎日欠かさず練習を続けてきた」と言う。稽古場を閉鎖した期間は団員の自宅をオンラインで結んでレッスンに取り組んだ。「公演中止は残念だが、表現や動きを工夫する時間が取れたと前向きに捉えている。団結力はむしろ高まった」と振り返る。

 国の緊急事態宣言が解除された5月下旬から、団員はマスクを着け全体練習に励む。悪魔が最後に滅びる筋立ての「新・白鳥の湖」を「人と人が手を取り合って難局に立ち向かう。コロナの時代にふさわしい物語」と確信する。

 不屈の原点は生まれ育った広島にある。「広島の復興は先人のめげない心があってこそ。平和への強い信念を持つことが大切で、芸術のあるべき姿でもある」と被爆75年の今、改めて実感する。  感染状況を注視しながら公演を重ねる予定でいる。バレエを始めて70年となる来年は「ぜひ広島で舞台に立ちたい」と意気込む。

(2020年8月8日朝刊掲載)

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